日本の製造業は、1億人以上の人口を抱える国内市場向けに作った工業製品を、同じ品質で世界に輸出した。1億人以上という大きな市場があれば、日本市場向けに独自技術を投入した製品でも大量生産のメドが立つ。日本市場は世界有数の高品質や高機能にこだわりを持つ市場だったため、その製品は世界でも受け入れられた。

 ところが、世界標準の製品作りが求められるようになった。しかも、足下の市場が小さい韓国や台湾は最初から世界市場向けの製品作りをして、ガラパゴス化した日本製品を売り場の外に追いやっていった。パソコンやテレビ、スマートフォンなどは、大まかにこうしたストリーで日本製品の国際競争力が失われていった。

 では、中国製品はどうか。14億人もの人口を擁する巨大市場では、そこに特化して作った工業製品に圧倒的な量産効果と、製品をブラッシュアップしていく機会をもたらす。例え、中国国内市場向けでも、世界を席巻するパワーを宿してしまう可能性がある。工業製品において、生産量と販売量は力そのものである。

 「チャイナスタンダードは世界を制するか」と題して、中国企業が発信する技術やビジネスの手法が世界標準になる可能性を議論する今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、慶應義塾大学の田口眞男氏である。巨大な中国市場で育まれる製品や技術のスタンダード化について、量の論理や国内市場の特性などに着目して考察する。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員
田口 眞男(たぐち まさお)  1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。メモリーセル、高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2017年4月より同大学の先端科学技術研究センター研究員。技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。
【質問1】中国企業が世界の技術開発や市場成長を先導する可能性が最も高い分野は何でしょうか?
【回答】商業を支えるIT技術、特にビットコイン関係
【質問2】今後、中国発の標準が欧米発の標準に取って代わる動きが進むと思われますか?
【回答】欧米流契約文化に風穴が開く可能性があるが、全面的に取って代わることはないだろう
【質問3】中国発標準に対峙して、日本の電気・電子産業はどのような戦略・施策は採る必要があると思われますか?
【回答】統合し大きくなること