東京大学が、これまでとは本気度の違いを感じさせる新しい産学連携のかたちを打ち出している。五神 真総長が掲げる「産学連携から産学協創へ」というスローガンの下、大学と産業界の関係の再定義に着手し始めた。

 これまでの産学連携との最大の違いは、研究開発の現場同士の交流ではなく、企業と大学のトップ同士がビジョンを共有し、トップダウン的に連携を進めることだ。そして、以下の3点が従来の産学連携と異なるとしている。

(1)特定技術の開発だけではなく、取り組むべき社会課題を共有し、ビジョンの創出から研究開発の実施、社会実装まで、一貫して協力していくこと。
(2)特定の学術分野にとどまらず、問題解決に資する人材・技術・知識を、研究室・学部・文理の違いを超えて集め、多角的な課題解決に取り組むこと。
(3) 企業と大学の間で人材の交流を深め、双方の人材のレベルを引き上げていくこと。

 こうした同大学の指針に共鳴し、日立製作所とNECが手を挙げた。日立製作所は、東京大学内に「日立東大ラボ」と呼ぶ研究拠点を設置。鉄道、エネルギー、ITなどで、ビジョン創生から課題解決まで一貫して取り組む。一方のNECは、東京大学と戦略的パートナーシップを締結。取り組みの第一弾として、人工知能をテーマにした「NEC・東京大学フューチャーAI研究・教育戦略パートナーシップ協定」を結んで、技術開発と社会実装の検討を始めた。

 産業競争力を高める上で産学連携が効果的に機能した例は、米国、欧州、アジアなど世界中にある。同大学が打ち出した「本気の産学連携」は、産学連携が形骸化している日本の現状を打破するための提案として注目できる。今回のテクノ大喜利では、「本気の産学連携を考える」と題して、日本の産学連携のあるべき姿について論じていただいた。各回答者への質問は、以下の3つである。

【質問1】研究開発の現場同士ではなく、企業と大学それぞれのトップが進める大がかりな産学連携は必要だと思われますか。

【質問2】学術分野を超えた技術開発や社会実装法の策定を大学と連携して進めることに意義を感じますか。

【質問3】日本の企業は、グローバルな競争力を養うため、国内や世界の大学とどのように連携していくべきでしょうか。

表 テクノ大喜利「本気の産学連携を考える」回答者まとめ
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表 テクノ大喜利「本気の産学連携を考える」回答者まとめ