現在、半導体市場は空前の好景気の中にある。ただし、好不況の波が激しいのは半導体市場の常である。変調の兆しがあれば、確かな実測データを基に、いち早く察知したいものだ。ところが、これまで信頼を置いていた業界団体が公表する統計値では、半導体市場の動きを正確に計れなくなってきた。

 世界半導体市場統計(WSTS)は、2017年6月6日に前年比11.5%増としていた2017年半導体市場の成長率予測を、8月18日に一気に17%増にまで上方修正した。2016年に公表された秋季予測の時点では、2017年の成長率を3.3%増と予想しており、春季予測時にもその不確かさに苦言を呈する声が挙がっていた。

 また、日本半導体製造装置協会(SEAJ)は、日本製半導体装置の需給を示す「BBレシオ」の公表を中止すると発表した。これに先駆けて、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)も、2017年1月分から北米版BBレシオの公表を取りやめている。BBレシオは3カ月移動平均の半導体装置の受注額を販売額で割った値であり、半導体メーカーの投資動向をタイムリーに反映する重要な指標だった。

 業界の変調を観測するための定点観測データ自体が変質してしまうという現在の状況に、戸惑いが隠せない関係者は多い。今回のテクノ大喜利では、半導体関連の統計があてにならなくなっている背景とその影響を議論した。各回答者への質問は以下の3つである。

【質問1】半導体関連企業が、統計値を出す業界団体にデータを出さなかったり、脱退する背景には何があると思われますか?
【質問2】半導体関連の統計の信頼性が落ちたり、統計自体がなくなると、半導体関連やユーザー企業にはどのような不都合があると思われますか?
【質問3】半導体業界の動きを探るための指標として、何を頼りにしたらよいと思われますか?

 3つの質問に対するそれぞれの識者による回答要旨は、以下の表の通りだ。

表1 テクノ大喜利「ブラックボックス化する半導体産業の動き」回答まとめ
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表1 テクノ大喜利「ブラックボックス化する半導体産業の動き」回答まとめ