Intel社とMicron Technology社が発表した、新型メモリー技術「3D XPoint Technology」の将来性とその登場による波及効果を考えるための視点抽出を目的としているテクノ大喜利。今回の回答者は、半導体コンサルタントの清水洋治氏である。サーバーからスマートフォンまで、応用を広く想定して、そのインパクトを考察して頂いた。(記事構成は伊藤元昭)
半導体コンサルタント
【質問1の回答】バランスが良ければ一気に普及する
半導体チップを搭載する基板を観察すると、必ずしも最新チップだけで構成されているわけではないことが明確になる。部品である半導体は最終製品の市場とはその点が異なっている。
車や家電製品では、過去の製品はリサイクルショップや中古店でしか扱われないが、半導体チップの場合は20年を超えるロングセラーもあれば、コモディティとしてずっと使われるもの多い。これらは、新規製品と同列で扱われている。すべてが最新チップに置き換わっていくことは、非常に稀な業界と言ってよい。
「巨大市場であるスマートフォンは3D XPointを活用しないとならない市場か?」「ディープラーニングを活用する場合3D XPointでさらに価値が高まるか?」といった視点で考えてみよう。
前者スマートフォンでは、5G通信のような超高速通信で、3D XPointが真価を発揮するものと思われる。ただしコストが高ければ、過去製品(現在主流およびその延長技術)がそのまま使われていく。すべてが最新やベストで構成されるほど半導体業界は単純にはできていない。コストや性能のバランスだけではなく、信頼性や温度特性、製品寿命、歩留まりなど半導体チップ供給には多くのハードルがあるからだ。さらに安定供給可能かどうかも重要だ。3D XPointを用いてスマホで何をするかは、今のところあまり良いアイデアがないのではないか。
一方、高速で高密度という3D XPointの特性は、サーバーやディープラーニングのような高度なコンピューティングには最適であろうと思われる。メモリーの高速化はプロセッサーと組み合わされてこそ真価を発揮するからだ。3D実装なども可能になれば、非常に大きなインパクトをもたらすかもしれない。高速化はそのまま性能に直結する。