Intel社とMicron Technology社が発表した、新型メモリー技術「3D XPoint Technology」の将来性とその登場による波及効果を考えるための視点抽出を目的としているテクノ大喜利。今回の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。半導体技術の進化、業界の動きを現場で見続けてきた視点から、3D XPointの位置付けを考察して頂いた。(記事構成は伊藤元昭)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
【質問1の回答】当初は相当高価なのでニッチ市場にとどまるが、中長期的には大きなインパクトを及ぼす
3D XPoint技術を用いた新型メモリーは、多くのユーザーが切望していた、DRAMとNANDフラッシュメモリー(以下NANDと略記)間の大きなギャップを埋める、いわゆる「ストレージ・クラス・メモリー(Storage Class Memory:SCM)」のまさにど真ん中のスペックを持ったメモリーである。同時に、微細化や書き換え速度や寿命で壁に突き当たっているNANDの後継となり得るストレージメモリーでもある。
ただし、現行のNANDはビット当たりの単価が極めて廉価な上、大容量を目指して3D化競争が激化しているため、新型メモリーが高価である限り、NANDが次々と置き換わるような事態にはなるまい。
Intel 社は、2015年8月にサンフランシスコで開催した「IDF2015」で、3D XPoint技術を用いた新型メモリー「OPTANE」を採用したSSD試作品を公開した。従来のNANDを用いた場合に比べて、素子自体の速度は1000倍速いと公言しているが、SSDシステムではI/O律則で5~7倍しか高速化していない。しかし、それだけでも高速になったということで、まずは割高でも高速で書き換え寿命の長い、高信頼性のSSDが欲しいハイエンド・ユーザーには受け入れられるだろう。製造技術の工夫や大量生産で、ビット当たりの価格が低下するとともに、徐々に市場規模の大きな用途へと導入が拡大していくだろう。
一方、主記憶については、NANDに比べれば書き換え寿命が1000倍長いものの、DRAMのそれよりは桁違いに短い。今のところ主記憶用としては性能不足である。しかし、主記憶DRAMの付近で、高速のメモリーバスに接続する大容量の不揮発性メモリーとしてDIMMソケットに乗せることで、その性能を十分に発揮して、プロセッサーの処理スピードの高速化を図れる。
まずは、データセンター向けサーバーなど、大量のデータを超高速で処理する必要がある分野に適用されるだろう。サーバーでは、メモリー階層をより深化させて、メモリー階層を根底から改革しようという動きがある。OPTANEの登場で、この動きは急速に活発化するだろう。長期的には、価格低下に伴い、パソコンやさらにはIoT向け端末の組み込みマイコンなど市場規模の大きな分野に浸透していく可能性を秘めている。