Intel社とMicron Technology社が発表した、新型メモリー技術「3D XPoint Technology」の将来性とその登場による波及効果を考えるための視点抽出を目的としているテクノ大喜利。今回の回答者は、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。3D XPointが登場した時代の背景を分析し、そこを素地とした同技術がエレクトロニクス業界に与えるインパクトについて考察して頂いた。(記事構成は伊藤元昭)

三ツ谷翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) プリンシパル
 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。

【質問1】3D XPointに、メモリーメーカーの勢力図を塗り替えるインパクトを感じますか?
【回答】勢力図を変えるアーキテクチャー革新の可能性は秘める

【質問2】3D XPointで、半導体ユーザーにどのような機会とリスクが生まれましたか?
【回答】システムの発展機会が期待されるが、開発環境の充実度次第

【質問3】3D XPointで、装置や材料のサプライヤーにどのような機会とリスクが生まれましたか?
【回答】微細化の継続性を調和率とした、業界としてのイノベーションの維持

【質問1の回答】勢力図を変えるアーキテクチャー革新の可能性は秘める


 3D XPointは未知の部分が多い部分が多い技術だ。このため、本稿ではその内容を詳細に取り上げるのではなく、それを取り巻く環境変化の観点から、そのインパクトの可能性について考察したい。

 本技術領域に関連して、エレクトロニクス業界は2つのトレンドから変局点を迎えつつある。

 一つは、IoTの進化に伴う処理速度の律速だ。データの増大に伴って、その読み出しや転送が全体を律速するようになってきている。ネットワーク層などでの革新も進められているが、メモリーのアーキテクチャそのものの革新が求められている。もう一つはいわゆるMooreの法則の終焉と言われる微細化の律速だ。微細化の限界についてはこれまでの歴史の中でも度々議論されてきたが、その都度、メモリー方式や3D化などの技術的イノベーションによってその限界が突破されてきた。

 つまり、今日直面している処理速度と微細化といった2つの限界に際し、小手先でない技術革新を求める土壌、つまりアーキテクチャーとしての刷新の必然性が整っていると言える。

 この文脈において、3D XPointはNANDフラッシュに対する桁違いの高速性と、今後の微細化の継続可能性の2点にておいて、アーキテクチャー革新をリードするポテンシャルを秘めている技術だと考えられる。そして、往々にしてアーキテクチャーの革新は、バリューチェーンの変化や主要プレイヤーの変化などといった既存の勢力図に変化をもたらすことが通例である。

 3D XPointの技術内容には未知の部分も多いため、個別技術としての成否は読み切れない。前掲のようなトレンドの中で、業界勢力図を塗り替えうるアーキテクチャー革新の可能性を持つ技術として、注目に値するのではないか。