Intel社とMicron Technology社が発表した、新型メモリー技術「3D XPoint Technology」の将来性とその登場による波及効果を考えるための視点抽出を目的としているテクノ大喜利。今回の回答者は、微細加工研究所の湯之上 隆氏である。NANDフラッシュメモリーが普及した理由を考察し、3D XPointとNANDフラッシュの類似点と相違点を指摘して頂いた。(記事構成は伊藤元昭)

湯之上 隆(ゆのがみ たかし)
微細加工研究所 所長
 日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北−零戦・半導体・テレビ−』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。

【質問1】3D XPointに、メモリーメーカーの勢力図を塗り替えるインパクトを感じますか?
【回答】小さなイノベーションを起こす

【質問2】3D XPointで、半導体ユーザーにどのような機会とリスクが生まれましたか?
【回答】3D XPointをSCMとして用いるビジネスチャンスが生じた

【質問3】3D XPointで、装置や材料のサプライヤーにどのような機会とリスクが生まれましたか?
【回答】装置や材料メーカーへのインパクトは大きくない

【質問1の回答】小さなイノベーションを起こす


 新型メモリーについては、これまでも、FeRAM、PRAM、ReRAM、MRAMなど、さまざまなメモリーが開発され、既存のSRAM、DRAM、NANDフラッシュ、NORフラッシュを代替する計画が発表されてきた。しかし、残念ながら、一度もそれが実現したことは無い。つまり、1987年にNANDが発表されて以来、新型メモリーがイノベーションを起こした例は無い。

 なお、ここでいう「イノベーション」とは、「爆発的に普及した技術や製品」を意味する。新聞、雑誌、テレビなどが「イノベーション」の訳として用いている「技術革新」は、明らかに誤訳である。質問1は、この正しい訳での「イノベーション」という言葉を使えば、「3D XPointは、NAND以来のイノベーションを起こすことができるのか?」と言い換えることができる。私は、3D XPointは勢力図を大きく塗り替えるほどではないかもしれないが、ある程度普及すると思う。つまり、3D XPointが小さなイノベーションを起こすだろうと予測している。その理由は、これまでの新型メモリーがなぜ普及しなかったか、なぜNANDは普及したのかを考察することによって明らかになってくる。