Intel社とMicron Technology社は共同で、「3D XPoint Technology」(OPTANEという名称で製品化)と呼ぶ次世代不揮発性メモリー技術を発表した。
NANDフラッシュメモリーに比べて1000倍高速で、1000倍書き換え寿命が長く。しかもNANDフラッシュと異なり、ランダムアクセスメモリーとして利用可能で、同様の性質を持つDRAMに比べて記録密度が10倍高いという、抜けた性能をたたき出す技術だという。その上、NANDフラッシュで危ぶまれていた微細化の継続が、今後も可能になるとしている。さらに試作チップは、20nmプロセスを使った128Gビット品と驚きの完成度で登場した。
3D XPointは、技術面、応用面、事業面のいずれにおいても、見どころと謎の多い技術である。Intel社とMicron社ともに、3D XPointの技術の詳細について多く語っていない。実現する性能の高さと、隠された部分の多さから、半導体業界では関心の的になり、さまざまな憶測を呼んでいる。応用面では、メモリーシステムの刷新が予感されている。
今回の大喜利では、「新型メモリー、3D XPointとは何者か」と題し、同メモリーの将来性とその登場による波及効果を考えるための視点抽出を目的とした。最初の回答者は、野村證券の和田木哲哉氏である。(記事構成は伊藤 元昭)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
【質問1の回答】初期段階では、一部市場の獲得にとどまるので、大きな変化は生じない。SSD市場を取るのは困難
3D XPointメモリーについての詳細は不明だが、相変化メモリーであり、高集積化のためにTSVで積層することは分かっている。Intel社の発表によると、X-Pointは、(1)NANDフラッシュに比べ、速度が1000倍、(2)DRAMに比べ、記録密度が10倍、(3)NANDフラッシュに比べ、書き換え寿命が1000倍、という特徴がある。しかし、逆に言うと、DRAMよりも低速で書き換え寿命が短く、NANDフラッシュよりも記憶密度が低いということになる。つまり、DRAMとNANDフラッシュの双方を大々的に置き換えるような、ユニバーサルメモリーのようなポテンシャルはない。
Intel社のホームページにも書いてあるが、要はDRAMとNANDフラッシュの間を埋めるメモリーとして期待されていた「ストレージ・クラス・メモリー」である。ということで、サーバー用にDRAMとSSDの中間の階層で使用するのが一番順当であり、Intel社というユーザーが既にいるのだから、ビジネス面での成功も確実である。ここを狙う分には、半導体業界の勢力図には大きな変化は生じない。
しかし、投資家を意識してか、3D XPointメモリーが声高に言っているのは、SSD用途でのNANDフラッシュとの真っ向勝負である。現段階では、Intel社がついているとはいえ、Rambus DRAMの例もあり、普及に向けて安心できる状態とは言い難い。ここまで製造がこなれ、極限まで安くなったNANDフラッシュと真っ向から戦うのはほぼ不可能であろう。3D XPointの特徴を生かした、ハイエンドSSD向けに活路を見出すのではないか。