文部科学省の平成27年度学校基本調査によると、日本には779校の大学がある。最も多い都道府県は東京都で137校、最も少ない鹿児島県にも6校ある。これらの大学のすべてが、日本企業の事業競争力を高めるための「本気の産学連携」に取り組めるのかといえば、現状は厳しい。

 企業がたくさんある都市部の有名大学は、産学連携の機会も多いことだろう。しかし、すべての大学が、同じ目標を掲げて、同じ方法で産学連携に取り組むことは現実的ではない。世界の最先端の技術、知見、事業を扱うだけが、産学連携の目的ではないはずだ。今回は、IHSテクノロジーの大山 聡氏が、地方大学でなければできない、多様な産学連携のあり方について論じる。産学連携の成果を高めるには、その裾野を広げるための取り組みも大切なのではないだろうか。
(記事構成は伊藤元昭)

大山 聡(おおやま さとる)
IHSテクノロジー 主席アナリスト

1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年より現職で、二次電池をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。

【質問1】研究開発の現場同士ではなく、企業と大学それぞれのトップが進める大がかりな産学連携は必要だと思われますか。
【回答】必要と考えるが、産学連携の範囲をもっと広くとらえ、より具体的な目的を掲げることが重要

【質問2】学術分野を超えた技術開発や社会実装法の策定を大学と連携して進めることに意義を感じますか。
【回答】意義を感じるが、大学を「学術的な研究機関」と決め付ける必要はなく、もっと実践的なことを習得できる教育機関であってもよい

【質問3】日本の企業は、グローバルな競争力を養うため、国内や世界の大学とどのように連携していくべきでしょうか。
【回答】まずは国内の大学に対して、どのような連携を求めているか具体的なテーマを示し、学術的な内容だけでなく、より実践的な内容も含めて連携戦略を議論すべき