産学連携という言葉を聞いて、ワクワクするような期待感を感じる人は、どのくらいいるのだろうか。日本では、大方の人は、費用をかけて産と学それぞれの思惑を押し隠した活動をした挙げ句に、実利があるのかないのか分かりにくい予定調和的な成果だけしか出てこない取り組みのように見ているのではないか。

 大学には、夢のある研究がたくさんある。企業にも価値のある事業がたくさんある。本来ならば、両者が融合することで新しいことを生み出す化学反応を起こす可能性がある。実際、欧米などでは産学連携が効果的に機能している例はいくらでもある。しかし日本の現状では、そのような期待感を感じない。だからこそ、満を持して「本気の産学連携」を進めると聞けば、注目せずにはいられない。

 今回は、大学で教鞭を執った経験がある微細加工研究所の湯之上 隆氏が、「本気の産学連携」の真贋を判定するための視点を提示した。「本気の産学連携」は始まったばかりであり、現時点で真贋の結論を出すことは時期早々かもしれない。しかし、ここで同氏が示す切り口から、取り組みの価値を産業界と学界の双方がチェックしていくことは、産学連携を価値あるものにするためには必要であろう。
(記事構成は伊藤元昭)

湯之上 隆(ゆのがみ たかし)
微細加工研究所 所長
 日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北−零戦・半導体・テレビ−』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。

【質問1】研究開発の現場同士ではなく、企業と大学それぞれのトップが進める大がかりな産学連携は必要だと思われますか。
【回答】この「産学連携」の発案者とスポンサーが誰かによる

【質問2】学術分野を超えた技術開発や社会実装法の策定を大学と連携して進めることに意義を感じますか。
【回答】意義のあるなしの前に、そもそも無理だろう

【質問3】日本の企業は、グローバルな競争力を養うため、国内や世界の大学とどのように連携していくべきでしょうか。
【回答】人の言ったことに従い人のふんどしで相撲を取るのではなく、身銭を切って情報を集め、脳みそに汗をかいて知恵を出せ