半導体業界では当たり前でも、他業界からは奇妙に見えることが多々ある。業界団体主導で、世界的統計が公表されるのもその1つだ。半導体業界では、Mooreの法則に沿った予定調和的な技術開発と業界発展が前提に考えられているためか、企業間の利害を調整する業界団体の力が強い。世界的な統計値を共有し、それぞれの企業が経営判断を下す風潮も、こうした業界構造の一端である。

 今回のテクノ大喜利では、半導体関連の統計値が不確かになっていることにどう向き合っていったらよいのかを議論している。今回のテーマを編集部内で企画したとき、半導体以外の分野を見ている記者からは、「そもそも、どうしてそのような統計値が必要なのか。他の業界には、細かい生産量や受注量などのデータはなくてもビジネスをしている」という声が上がった。もしかすると、半導体関連の統計値は、経営判断を下す上で便利なものではあったが、必要不可欠なものではなかったのかもしれない。業界構造が大きく様変わりする中、もう一度、統計の意義、必要性を問い直すべきではないか。

 6番目の回答者は、東海東京調査センターの石野雅彦氏である。正確な統計値がないことを前提にビジネスすることで、得られる力があることを指摘している。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
石野 雅彦(いしの まさひこ)
東海東京調査センター シニアアナリスト
石野 雅彦(いしの まさひこ) 山一証券経済研究所、日本興業銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、東海東京調査センターのシニアアナリストとして半導体、ディスプレイ、通信などテクノロジー企業および産業を対象にした調査・分析に従事している。
【質問1】半導体関連企業が、統計値を出す業界団体にデータを出さなかったり、脱退する背景には何があると思われますか?
【回答】フェア・ディスクロージャーの観点から先行性のあるデータの開示を取りやめた
【質問2】半導体関連の統計の信頼性が落ちたり、統計自体がなくなると、半導体関連やユーザー企業にはどのような不都合があると思われますか?
【回答】世界的統計がない業界は多い。業界団体頼りの体質を改善する好機
【質問3】半導体業界の動きを探るための指標として、何を頼りにしたらよいと思われますか?
【回答】当面はメモリー需要の増大を解析することが重要