例え正確な半導体関連の統計値がなくても、それに変わる指標が得られれば半導体ビジネスの経営判断を下す際に何ら問題はない。特に半導体業界は、Mooreの法則に沿った明確な長期技術トレンドと、それに伴う定期的な投資があるため、先行きが見通し易い業界であるとも言えた。統計値が必要になるのは、短期的なオペレーションに付随する経営判断を下す場合であったように思える。少なくとも、これまでは。

 現在、半導体関連の統計値があてにできなくなったことで、最も困る点は、現在の半導体業界が史上空前のバブル状態という、従来トレンドでは計り知れない特異点の中にあることだ。トレンドでは判断できないときだからこそ、本来ならばきっちりとした調査に基づく信頼性の高い統計値が必要になる。半導体メーカーや製造装置メーカーは、今のバブルによって何をどのくらい得て、得たモノが将来に向けた何に回るのかを正確に知りたい。一番必要とされるときに、統計が役立っていない状況に、ジレンマを感じる。

 半導体関連統計の現状とこれからの接し方を論じている今回のテクノ大喜利、5番目の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。同氏は、足下の半導体バブルの状況下で、先行きを見通す情報を得るための視点を示唆する。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし) 大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経テクノロジーオンラインなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】半導体関連企業が、統計値を出す業界団体にデータを出さなかったり、脱退する背景には何があると思われますか?
【回答】ダントツ企業の割拠
【質問2】半導体関連の統計の信頼性が落ちたり、統計自体がなくなると、半導体関連やユーザー企業にはどのような不都合があると思われますか?
【回答】ダントツ企業に不都合なし。弱小企業は先読みが難しくなる
【質問3】半導体業界の動きを探るための指標として、何を頼りにしたらよいと思われますか?
【回答】その時々のエレクトロニクス市場および半導体市場ドライバーを見極め、その動向をフォローする。2016年後半から2018年に掛けてはメモリー価格動向