半導体関連の統計の信ぴょう性が落ちてきているように感じるようになった背景として、M&Aによる半導体メーカーや半導体製造装置メーカーの寡占化を指摘する意見が多い。業界団体が中心となって、参加企業から集めたデータを集計して統計値を求めていたが、寡占化が進み各メーカーにとってデータを公開するメリットが薄れてきているというものだ。

 しかし、従来の統計値を求める仕組みでは把握できない部分での取り引きや生産活動が、急速に拡大していることを指摘する声も出てきている。

 半導体統計の信ぴょう性の変化とそれに対する対応などを議論している今回のテクノ大喜利、2番目の回答者はテカナリエの清水洋治氏である。数多くの電子機器を分解し、内部に搭載されている部品をつぶさに調査している同氏は、半導体関連の統計値には表れない、赤裸々な半導体流通の姿を知る立場にいる。同氏の肌感覚では、半導体関連の統計と実際に搭載されているチップの顔ぶれの間に大きなギャップがあると感じているようだ。普段感じている違和感を論じるとともに、実態に合った半導体市場の姿を把握するための方法も示唆する。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
清水洋治(しみず ひろはる)
テカナリエ 代表取締役 技術コンサルタント
清水洋治(しみず ひろはる) ルネサス エレクトロニクスなど半導体メーカーにて、1980年代から2015年まで約30年間にわたって半導体開発に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見を持っている。2015年から、半導体、基板、およびそれらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役 上席アナリスト。
【質問1】半導体関連企業が、統計値を出す業界団体にデータを出さなかったり、脱退する背景には何があると思われますか?
【回答】エコシステム自体が成熟した
【質問2】半導体関連の統計の信頼性が落ちたり、統計自体がなくなると、半導体関連やユーザー企業にはどのような不都合があると思われますか?
【回答】実態を観察せずに状況把握する例が増え、判断ミスが増える
【質問3】半導体業界の動きを探るための指標として、何を頼りにしたらよいと思われますか?
【回答】市場への影響力が大きなプラットフォームをきちんと観察すること