東芝のいわゆる「不適切会計問題」によって、同社の半導体事業にどのような影響が及ぶのかを考えるテクノ大喜利。今回の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏に、現在東芝の半導体事業を囲む事業環境を横目で見ながら、同社が今後採るべき方策について、お答えいただいた。(記事構成は伊藤 元昭)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
【質問1の回答】高確率で、ディスクリ―トおよびシステムLSI部門の売却。低確率で、資金調達の難化によってメモリー事業が劣勢に
室町社長は、一切の制約を設けぬ改革をうたい、抜本的なリストラを実行すると記者会見で述べている。同氏が数多の反対を押しのけてこの改革を断行するならば、在庫評価額を正しく計上せぬ不正経理を行い、見せかけの利益を出そうとしてきた赤字基調のディスクリートとシステムLSIの両部門は売却されるだろう。売却先が見つからなくても廃止となるだろう。これらの部門は、もともと業績不振で工場閉鎖や再編の渦中にある。作り溜めが「今回の問題」を引き起こしたと言われている。
メモリー事業は, 日本がDRAM全盛だった時代からいわば自転車操業で、利益を上げ、それで巨額の設備投資を継続できるかどうかで勝敗が決まる。DRAMの場合、日本勢が息切れしたらあっという間に韓国勢にシェアをさらわれてしまった。このため、東芝は、NANDフラッシュメモリーでも、金持ちのSanDisk社をパートナーとして投資負担を半減しつつ、今後も巨額投資を継続せざるを得ない。継続できなければ、DRAMと同じ運命をたどらざるを得ない運命にある。
2015年3月期の決算が赤字転落し、緊縮財政により、いままで継続してきた2000億円規模の設備投資を減額せねばならない事態となれば、東芝のメモリー事業はたちまち劣勢となるだろう。もっとも、東芝には旧三井財閥系の有力メインバンクがついており、引き続東芝を支援していくと表明している。メインバンクを持たなかったエルピーダメモリーのような悲惨なことにはならないだろう。もしもDRAMに続いてフラッシュメモリーでも負けてしまえば、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし1)」を実証してしまうことになる。
ただし、こうした事態に陥る可能性は低いとはいえ、今後も証券取引等監視委員会や東京証券取引所、金融庁、東京地検特捜部といった公的機関への東芝関係者からの内部告発が続けば、比較的穏やかなことも言っていられなくなる。粉飾決算と認定され、刑事事件へと発展することになれば、半導体部門どころか東芝本体の存続さえもおびやかされる深刻な事態に発展する可能性はゼロではない。