ソフトバンクの社名にある「バンク」という言葉には、どのような思いが込められているのだろうか。同社のホームページには、「情報化社会のインフラストラクチャー(社会的な基盤)の役割を担う存在になる、という大きな決意を込めて、「バンク」という言葉を用いました」と書かれている。

 では、銀行とは、社会の中で、どのような役割りを担っている存在なのだろうか。一般社団法人 全国銀行協会は、「「人」「企業」「国・自治体」は、お金の流れが止まれば活動がストップしてしまいます。銀行は「人」「企業」「国・自治体」などにお金という血液を送り込む心臓のような存在といえます」と銀行を説明し、その役割りとしてお金の「保管」「管理」「運用手段の提供」「融資」「決済」を挙げている。

 つまり、お金に替えて、情報を対象にこうした機能を提供するのがソフトバンクであると言っているのだ。

 さて、IoTがこれからの多くの産業の成長を支える原動力となることに異論を挟む声は少ない。重要なことは、この成長の原動力をいかに生かして、実際に新しい産業を創出していくかである。今回の回答者である慶應義塾大学の田口眞男氏は、IoTを活用した産業の成長を支える役割りとしての半導体産業に触れ、ARM社を手中にしたソフトバンクが「IoTバンク」と呼べる役割りを演じる可能性とその意義を論じる。(記事構成は伊藤元昭)

田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 訪問教授

1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事、特に新型DRAMセルの開発でフィン型のキャパシタ、改良トレンチ型セルの開発など業界で先駆的な役割を果した。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。DDR DRAMのインターフェース標準仕様であるSSTLの推進者であり、命名者でもある。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2016年4月からは同大学 訪問教授と共に、技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。

【質問1】ソフトバンクは、IoTに関連する業種、企業が数ある中で、なぜ半導体業界のARMを買収したいと思ったのでしょうか。
【回答】新しいIoTビジネスを展開するためARM社の戦略的着想を活用する

【質問2】ソフトバンクがARMを買収することで、最も影響を受ける企業はどこでしょうか。
【回答】半導体ファウンドリー製造会社

【質問3】ソフトバンクによるARMの買収は、半導体業界にとって幸せな結果をもたらすのでしょうか。
【回答】技術やビジネスの種のバンクができれば幸せな結果となる