今回の買収に際して、日本の一般紙やテレビなどの報道の中には、「ソフトバンクはARM社のような無名の企業をなぜ3.3兆円も出して買ったのか」という切り口からの報道が多くあった。しかし、電子業界や半導体業界にとっては、ARM社の方がよほど身近で巨大な存在だ。「ARM社は、なぜ極東のいち通信事業者であるソフトバンクに買収されてしまったのか」というのが世界の関心事であろう。そして、電子産業や半導体産業にとっては、ソフトバンクがARM社をどう生かすかより、ARM社の強みは今後も継続するのかといった点こそが気になる。

 そもそもARMコアは、なぜこれほど広く普及したのか。IoT時代にもその強みが生かされると目されるARMの真価を測るため、強さの原点を解き明かしたい。今回の回答者であるテカナリエの清水洋治氏は、マイコンメーカーの中で、ARMコアと市場で対峙する立場にいた。同氏は、ARM社の強みを、CPUというチップを構成するコアとはどのような存在なのかといった本質論からARM社の課金モデルまで、広範囲の視点からこと細かに分析した。そのうえで、IoT時代にARM社の強みが継続できるのかを検証した。(記事構成は伊藤元昭)

清水洋治(しみず ひろはる)
技術コンサルタント
ルネサス エレクトロニクスなど半導体メーカーにて、1984年から2015年まで30年間にわたって半導体開発に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見を持っている。2015年から、半導体、基板、およびそれらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの上席アナリスト。

【質問1】ソフトバンクは、IoTに関連する業種、企業が数ある中で、なぜ半導体業界のARMを買収したいと思ったのでしょうか。
【回答】下木も茂る森だから

【質問2】ソフトバンクがARMを買収することで、最も影響を受ける企業はどこでしょうか。
【回答】 CPUがこの先も進化すれば誰も影響は受けない

【質問3】ソフトバンクによるARMの買収は、半導体業界にとって幸せな結果をもたらすのでしょうか。
【回答】CPUを使いこなすにはARMだけでは不十分