ソフトバンクグループが、スマートフォンやIoT機器のプロセッサー・コアの業界標準を握るARM Holdings社を買収するという7月18日の発表は、さまざまな業界に衝撃を与えた。そして9月5日、総額約240億ポンド(約3.3兆円)で株式の取得を完了し、ARM社はソフトバンクグループの100%子会社になった。

 今回の買収は、何かと目立つソフトバンクが当事者であったこと、買収額が極めて巨額だったこと、また組み合わせの意外性から、さまざまなメディアが、あらゆる切り口から報道した。ソフトバンクの孫正義社長の意図を推し量るもの、買収の成否を論じるもの、スマートフォン市場での影響を予想するもの、そしてIoT関連市場でのソフトバンクの戦略を論じるものなど、M&A関連の報道としては異例の多様さと情報量だった。

 ソフトバンクとARM社という組み合わせは、新しい時代を感じながらも、先が読みにくい状態を生み出している。これまでテクノ大喜利では、先行きを読む上での切り口が定まっていない段階のテーマを主に選んで議論してきた。今回は百家争鳴、ひと通りの着眼点、切り口が出そろったこの段階で、あえて今回の買収について論じていただいた。初回となる今回は、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏が、インターネットの創成期に重要な役割りを演じたベンチャーキャピタルとソフトバンクの類似性を指摘。今回の買収によって、IoT関連市場でのARM社の戦略実践が加速すると予測している。(記事構成は伊藤元昭)

三ツ谷翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) プリンシパル
 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。

【質問1】ソフトバンクは、IoTに関連する業種、企業が数ある中で、なぜ半導体業界のARMを買収したいと思ったのでしょうか。
【回答】両社はエコシステムづくりそのものを志向する“似た者”同士

【質問2】ソフトバンクがARMを買収することで、最も影響を受ける企業はどこでしょうか。
【回答】無数のアプリ開発者の創出が促され、大きな経済圏を形成

【質問3】ソフトバンクによるARMの買収は、半導体業界にとって幸せな結果をもたらすのでしょうか。
【回答】戦略投資の自由度を得たARMが業界の価値の総取りを目指す