電気自動車(EV)や自動運転車のビジネスを論じるとき、タクシーの代替や物流の無人化といったモビリティーサービスとセットで論じられることが多い。新しい世代のクルマを、公共性の高い移動や輸送の手段として位置付けたものだ。

 利用シーンや管理方法をきっちりと定義しやすい商用車の方が、発展途上のクルマを扱う上で都合がよさそうなことは理解できる。また確かに、少子高齢化による人不足や働き方改革といった社会問題を解決する手段として、こうした新しい世代のクルマにニーズがあることも、それが巨大ビジネスに成長する可能性を秘めていることも分かる。だが同時に、「今のEVや自動運転車では、個人が愛車として購入するには未成熟すぎて時期早々。だから別の用途を」という逃げの姿勢も垣間見えると言ったら言い過ぎか。

 欧州でのエンジン車廃止の潮流は、EVの普及策としては、かなり踏み込んだものだ。商用車だけではなく、自家用車も対象になる可能性が高いのだから。クルマは現代社会における文化の一部である。フェラーリやランボルギーニは何を作るのか、クルマの改造に勤しむ愛好家は一体何に情熱を注ぎ込むのか、そして何よりクルマは愛せる存在であり続けられるのか・・・。欧州でのエンジン車廃止の話を聞くにつれ、疑問と不安が次々と浮かぶ。

 「エンジン車廃止の潮流に商機を探る」をテーマに議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。同氏は、新しい世代のクルマを愛車にするために、電気・電子産業は何ができるのかという視点からエンジン車廃止によって生まれる商機を論じる。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし)  大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・理事。マイナビニュースや日経テクノロジーオンラインなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】エンジン車の廃止に向けた、最大のボトルネックは何でしょうか?
【回答】自動車向け電池技術の未成熟
【質問2】エンジン車の廃止に伴って、電気・電子業界に生まれる最大の商機は何でしょうか?
【回答】(1)電池ビジネスの将来有望な自動車向けへの拡大、(2)情報家電としての自動車ビジネスへの新規参入
【質問3】商機をつかむために、どのようなアクションをすべきでしょうか?
【回答】家電と異なり自動車は人命に直接かかわるため、安全性確保、長い製品寿命の保証に万全を期すべき