ガソリンや軽油を燃料とするエンジン車を廃止する動きが、世界中で突然活発化してきた。

 フランスと英国の政府は、2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止すると発表。自動車産業が栄えるドイツでも、先の両国ほどはハッキリしていないものの、連邦参議院が2030年までにエンジン車の新規登録を中止するという方針を表明している。欧州だけではない。インドも2030年までにエンジン車の国内販売を禁止し、中国もエンジン車の生産を抑制する方向に政策を転換している。こうした動きに呼応して、早くもスウェーデンVolvo社がエンジン車の販売を2019年から中止すると発表するなど、迅速な対応に向けて動き始めた自動車メーカーが出てきている。

 これまで自動車に関わる環境保全の手段では、温室効果ガスの排出規制や税制や補助金の供出による電気自動車(EV)の普及促進が中心だった。今回の動きは一線を画する踏み込んだ施策であり、大きな潮流へと発展する可能性が出てきている。

 電気自動車は、エンジン車とは全く異なる技術体系と業界構造でのクルマづくりが求められる。機械部品に代わって電気・電子部品の存在感が大きくなり、電気・電子業界に新たなビジネスチャンスが生まれることは確実だ。今回のテクノ大喜利では、エンジン車廃止の潮流から電気・電子業界に生まれる商機について議論した。最初の回答者は、自動車産業の企業を対象にしたコンサルティング経験を持つ微細加工研究所の湯之上 隆氏である。半導体業界に長く身を置く同氏は、永遠に続くと思われた産業が瓦解していく様子を肌で経験してきた。今や日本のものづくりの中心にある自動車産業が今置かれている状況に、最大級の警鐘を鳴らした。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
湯之上 隆(ゆのがみ たかし)
微細加工研究所 所長
湯之上 隆(ゆのがみ たかし)  日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北−零戦・半導体・テレビ−』(文書新書)。趣味はスキューバダイビング(インストラクター)とヨガ。
【質問1】エンジン車の廃止に向けた、最大のボトルネックは何でしょうか?
【回答】世界的に言えば、その国の政府がガソリン車を止める判断ができるかどうか。日本に限って言えば、ガソリン車およびHV車の成功体験から脱することができるかどうか
【質問2】エンジン車の廃止に伴って、電気・電子業界に生まれる最大の商機は何でしょうか?
【回答】 EVの設計専門のファブレスや、EVの組み立て専門のEMSが誕生する
【質問3】商機をつかむために、どのようなアクションをすべきでしょうか?
【回答】可及的速やかなマーケティング、ビジネス戦略の立案、およびその迅速な実行