あらゆるデータや情報がデジタル化し、パソコンも、スマートフォンも、テレビも、内部構造は同じようなものになった。さらに、あらゆる産業のシステムがネットで相互接続されるようになり、それぞれの産業で生まれた情報が交じり合い、新たな価値を生み出すようになった。こうした電子産業を細かく区分していた境界線が消えていく大きな潮流の中で、特定の技術分野のチャンピオンや特定の応用分野の盟主が、分野を超えて同じ土俵で戦うようになってきた。

 半導体産業では、パソコン向けプロセッサーでは米Intel社、スマートフォン向けプロセッサーでは米Qualcomm社、メモリーでは韓国Samsung Electronics社、アナログでは米Texas Instruments社、パワー半導体では独Infineon Technologies社が、それぞれマーケットシェアと技術開発の先導力共にダントツ企業となっている。ただし、こうしたダントツ企業も、複数チップを組み合わせた総合力を競うチップセットやソリューションの事業では、お互いが競合になる場面がある。戦線は拡大し続け、半導体業界のダントツ企業が、IT業界や自動車業界のダントツ企業と競合する時代がすぐそこに来ている。特定分野でダントツ企業になることは、その後の分野を超えたダントツ企業同士の戦いに参加するための資格を得るだけのことなのかもしれない。

 「ダントツ企業たちが割拠する半導体市場」と題して、半導体ユーザーにとってのダントツ企業の功罪を論じている今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。半導体業界内でのこれまでのダントツ企業が生まれてきた過程を振り返り、さらにいかに圧倒的な力を持つ企業でもいつ失墜してもおかしくない将来の電子産業の状況を展望した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし)  大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・理事。マイナビニュースや日経テクノロジーオンラインなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】ダントツ半導体メーカーの存在は、半導体ユーザーにどのようなメリットをもたらしますか?
【回答】 巨額の研究開発費を注ぎ込んだ最先端半導体製品を安定供給で入手できる
【質問2】半導体ユーザーに、どのようなデメリットが生じますか?
【回答】(1)価格はダントツ企業のほぼ言いなりで、高値で買わざるを得ない、(2)自由に選べる選択肢が少なく、最終製品での差異化しにくい
【質問3】ダントツ企業同士による、分野を超えた競合が起きる可能性はありますか?
【回答】ある。変化の激しい時代には、分野を超えて競合相手が出現する