ここ数年間、半導体業界ではM&Aが立て続けに起きてきた。その結果、特定分野でダントツに強い半導体メーカーが生まれるようになった。パソコン向けプロセッサーでは米Intel社、スマートフォン向けプロセッサーでは米Qualcomm社、メモリーでは韓国Samsung Electronics社、アナログでは米Texas Instruments社、パワー半導体では独Infineon Technologies社・・・。主要な品種の市場では、少数だが複数メーカーが共存する寡占状態は終わった。今や、1位企業のシェアが2位をダブルスコア、トリプルスコアで引き離し、市場で君臨する局面へと移りつつある。

 莫大なデータを扱うIoTやAIの活用が広がり、半導体需要は今後も堅調に伸び続けていくことはほぼ確実な情勢である。そうした中、半導体チップの主要な品種それぞれに、市場と技術開発に大きな存在感を示すダントツ企業がいることは、半導体ユーザーのビジネスに、どのような影響を及ぼすことになるのだろうか。

 今回のテクノ大喜利では、特定の分野に圧倒的な力を持った半導体メーカーが存在することの功罪を論じていただいた。最初の回答者は、野村證券の和田木哲哉氏である。ダントツ企業が、その強みを固めていく過程とその弊害を、具体的な例を交えながら解説した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
和田木 哲哉(わだき てつや)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
和田木 哲哉(わだき てつや)  1991年早大教育卒。東京エレクトロンを経て、2000年に野村證券入社。アナリストとして精密機械・半導体製造装置セクター担当。2017年、Institutional Investor誌 アナリストランキング1位、日経ヴェリタス人気アナリストランキング 精密半導体製造装置セクター 1位。著書に「爆発する太陽電池産業」(東洋経済)、「徹底解析半導体製造装置産業」(工業調査会)など。
【質問1】ダントツ半導体メーカーの存在は、半導体ユーザーにどのようなメリットをもたらしますか?
【回答】忍耐を試す修業の場が得られる
【質問2】半導体ユーザーに、どのようなデメリットが生じますか?
【回答】デメリットのオンパレード
【質問3】ダントツ企業同士による、分野を超えた競合が起きる可能性はありますか?
【回答】ある。変化の激しい時代には、分野を超えて競合相手が出現する