半導体関連製品のユーザーに近い現場にいるエンジニアに、業界で話題の技術トレンドについて、それぞれの立場からの肌感覚や見解を披露して頂くテクノ大喜利のスピンオフ企画。題して、「テクノ大喜利 in the field」。今回は、「パワー半導体の主役はどの材料か」をテーマにして、6社のエンジニアに、同じ3つの質問を聞いている。

 お答えいただいたのは、2015年5月20日〜22日に掛けて幕張メッセで開催された「TECHNO-FRONTIER 2015」に出展した企業のブースで、来場者に自社の製品を解説していたエンジニア。ただし、各回答は、あくまでも回答していただいた解説員の方個人の見解であり、所属企業全体の総意ではないことを、あらかじめお断りしておきたい。

ローム
同社は、さまざまな種類のパワーデバイスを製品化している。Siデバイスでは、中高耐圧品を中心に製品展開を加速している。SiCデバイスについても、日本では同社が最初にショットキーバリアダイオードとMOS FETを製品化するなど積極的な展開をしている。MOS FETは、既に第3世代となるトレンチ構造のSiC MOSFETをラインアップに加えている。GaNデバイスの研究にも着手している。TECHNO-FRONTIERでは、これら多様なパワーデバイスを幅広く展示していた。
【質問1】現時点で想定しているパワーデバイスでのSi、SiC、GaNの使い分け
【回答】SiCは1200Vが中心、650VはSiの領域でありGaNがここに競合
【質問2】SiCやGaNなど化合物半導体系でないと実現不可能な応用は何か
【回答】3300Vといった高圧領域でのメリットはSiCの独壇場
【質問3】棲み分けは続くか、それともいずれかの材料に収束するか
【回答】価格の違いによって棲み分けは続く
図 ロームのTECHNO-FRONTIERでのSiCデバイスの展示
図 ロームのTECHNO-FRONTIERでのSiCデバイスの展示

【質問1の回答】SiCは1200Vが中心、650VはSiの領域でありGaNがここに競合

 ロームはここ1,2年でSi IGBTなど、Siパワーデバイスの製品ラインナップを拡充してきた。650V耐圧前後の製品が中心である。一方、SiCデバイスは、1200V耐圧が基本であるが、高付加価値製品として650Vから1700Vまでを用意している。単に特性だけを考えれば、SiCデバイスの方が優れていることは確かである。ただし、価格はSiデバイスの方が安い。SiCデバイスを使うことで、大きさや重要の面、消費電力や付帯設備も含めたシステム全体のコストの面で、メリットが出てくる応用に適したデバイスから優先的に市場投入していく。

 GaNデバイスに関しても耐圧で棲み分けることになるだろう。650VといったSiデバイス製品の層が厚い部分が中心になるため、明確に差異化できるようになってから製品化することになるだろう。