半導体関連製品のユーザーに近い現場にいるエンジニアに、業界で話題の技術トレンドについて、それぞれの立場からの肌感覚や見解を披露して頂くテクノ大喜利のスピンオフ企画。題して、「テクノ大喜利 in the field」。今回は、「パワー半導体の主役はどの材料か」をテーマにして、6社のエンジニアに、同じ3つの質問を聞いている。

 お答えいただいたのは、2015年5月20日〜22日に掛けて幕張メッセで開催された「TECHNO-FRONTIER 2015」に出展した企業のブースで、来場者に自社の製品を解説していたエンジニア。ただし、各回答は、あくまでも回答していただいた解説員の方個人の見解であり、所属企業全体の総意ではないことを、あらかじめお断りしておきたい。

トランスフォーム・ジャパン
Transphorm Inc.はGaNパワーデバイスに特化したメーカーである。ワイドギャップに起因する物性と高周波動作に向くGaNデバイスの特性を生かし、電気エネルギーの高効率利用や機器の小型化を実現する製品を提供している。2013年には、富士通とその子会社富士通セミコンダクターのGaNパワーデバイス事業を統合し、技術基盤と生産体制を強化している。TECHNO-FRONTIERでは、同社のGaNデバイスを利用して変換効率を98%に高めた安川電機製の家庭用屋内設置パワーコンディショナーなどを展示していた。
【質問1】現時点で想定しているパワーデバイスでのSi、SiC、GaNの使い分け
【回答】メリットが大きいのはSiCは1200V以上、Siは30V近辺、GaNは600V
【質問2】SiCやGaNなど化合物半導体系でないと実現不可能な応用は何か
【回答】GaNは家庭用パワーコンディショナー
【質問3】棲み分けは続くか、それともいずれかの材料に収束するか
【回答】コスト削減を進めて、GaNでなるべく多くのSiを置き換える
図 トランスフォーム・ジャパンがTECHNO-FRONTIERで展示していたGaNデバイスを搭載した安川電機製の家庭用屋内設置パワーコンディショナー
図 トランスフォーム・ジャパンがTECHNO-FRONTIERで展示していたGaNデバイスを搭載した安川電機製の家庭用屋内設置パワーコンディショナー

【質問1の回答】メリットが大きいのはSiCは1200V以上、Siは30V近辺、GaNは600V

 SiCデバイスは電圧が1200V以上、Siデバイスは約30Vといった低電圧領域に適していると考えている。GaNデバイスのアプリケーションは、600V近辺で使うのが一番大きなメリットを出せると考えている。GaNのメリットは電源回路の高周波数化ができることである。ただし、利用するためには、インダクタなど周辺部品に高周波動作に適した仕様のものが必要になる。また、ノイズ対策のノウハウも必要だ。こうした、周辺部品などエコシステムの整備が応用拡大の課題である。現在は、GaNデバイスの潜在能力を引き出すことができる構成の評価用ボードを作成し、ユーザーに提供している。