ディープラーニングなど人工知能(AI)関連の処理を実行するシステムの多くは、既存のコンピューターをベースにして作られている。そして、革新的な技術開発の力点は、学習のアルゴリズムや、学習の教材となるデータを集めるIoTシステムなどに置かれている。

 しかし、ビッグデータを教材とした学習や、さまざまな応用に際しての処理を実用レベルで実行するには、現在のコンピューターは余りにも非力だ。AI関連の処理を駆使したシステムを構築するには、半導体チップにも何らかのブレークスルーが必要になるだろう。

 今、AI向けのチップには、大きく2方向の動きがある。

 ひとつは、GPUやFPGAなど、超並列処理の実行に向いた構造を持つ既存デバイスを使って、AI向けチップ市場の早期立ち上げを目指す動きだ。この方向にばく進している企業がNVIDIA社である。自社チップをAI時代の業界標準チップに押し上げるべく、あの手この手の方策を採っている。この動きの目指す先にあるのは、パソコンと同様に、サービス、機器、ソフト、チップをそれぞれ別の企業が分担する水平分業化した業界構造である。

 もうひとつは、クラウドサービスの事業者が、自社用の専用チップを自社開発しようとする動きだ。この方向に動いている代表的な企業がIBM社である。同社のコグニティブ・コンピューティングの中核を占めるニューロモーフィック(脳を模した)デバイス「TrueNorth」を自社開発し、自社サービスの競争力を高めようとしている。この動きの先にあるのは、かつての大型汎用コンピューターの事業構造に似た、システムを構成する要素技術を1社がコントロールする垂直統合化した業界構造であるように見える。

 今回のテクノ大喜利では、「AIチップは誰が作る?」と題して、AIチップの覇権の行方を論じることで、AI産業の未来のかたちを考えていただいた。各回答者への質問は、以下の3つである。

【質問1】AIチップの開発と実用化に際して、どのような企業にどのようなチャンスが生まれると思われますか。

【質問2】水平分業型と垂直統合型、AIシステムのバリューチェーンはどのような形に収束すると思われますか。

【質問3】AIチップの技術開発や事業化は、民生機器や産業機器など組み込み機器の開発やビジネスにどのようなインパクトを及ぼすと思われますか。

表●テクノ大喜利「AIチップは誰が作る?」の回答まとめ
[画像のクリックで拡大表示]
表●テクノ大喜利「AIチップは誰が作る?」の回答まとめ