半導体の微細加工技術の進歩は、より高性能で価値ある機能を備えた半導体チップを作るための手段である。そして、その半導体チップの進歩もまた、より価値の高いシステムやサービスを生み出すための手段である。かつて日本の電機メーカーは、自社製の機器やシステムの価値を高めるために独自半導体の開発と製造を始め、これが日本の半導体産業が生まれるきっかけになった。ところが今では、業界標準の半導体チップを活用した方が競争力の高い機器やシステムが作れると判断して、半導体事業から撤退したり、分社化したりして手放してしまった。

 ところが今、世界のIT業界の巨人は、競うように最先端の半導体チップの自社開発に踏み切るようになった。米Google社、米Amazon.com社、米Apple社、米Microsoft社などなど、その例は枚挙にいとまがない。今、先端半導体は競争力の高いシステムやサービスを作る上での生命線である、その自社開発は本当に力のある企業だけに許される特権となっている。こうしたIT業異界の巨人たちにとって、半導体技術のさらなる進化なくして未来を描けなくなっている。

 「半導体、Å時代はくるのか?」と題して、半導体のÅ時代の意義と、そこでの課題を洗い出している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部毅氏である。今回のテーマのきっかけとなった14Åノードの是非を問うたimecの動きとその意図を熟知する同氏が、より微細な半導体プロセスを求める世界の空気を語った。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし)  大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・理事。マイナビニュースや日経テクノロジーオンラインなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】14Åノードのテクノロジードライバーとなる半導体チップは何だと思われますか?
【回答】本格的なAI時代の超低消費電力・超並列処理・非ノイマン型ハイパーフォーマンスコンピューティング(HPC)チップや6G時代のIoTハブとしてのスマートフォン向け超高性能モバイルSoC。
【質問2】14Åノードプロセスを確立する上で、最大の課題は何だと思われますか?
【回答】技術的な課題は、14Åパターン形成のためのリソグラフィー技術を開発できるかという点。ビジネスの課題は、製造コスト高のため性能向上の魅力で開発コストを回収できるかという点。
【質問3】サブnmのÅ時代はやってくると思われますか?
【回答】本気でやりぬこうとする研究集団と、それを欲して研究費を出すユーザーがいる限り、やってくると思う。