2018年の平昌オリンピックを契機にして韓国で、2020年の東京オリンピックを契機にして日本で5Gのサービス開始が予定されている。5Gのインフラ整備やビジネスの進展は、サービス開始当初のスタートダッシュを決められるかが、極めて重要になる可能性がある。

 5Gは、20Gビット/秒もの超高速・大容量を実現する「eMBB」、1km2当たり100万台をつなぐ多数同時接続「eMMB」、1msもの超低遅延「URLCC」といったニーズに対応できる無線通信手段を提供する予定である。このうち、eMBBのサービスが先行提供される見込みであり、超高速・大容量の通信の使い先として、4Kや8Kといった高精細な動画をスマートフォンなどに配信する用途が想定されている。既に普及している機器やサービスの進化系を足がかりにして、その後の新しいアプリケーションを育てる素地を作ろうとする意図が透けて見える。

 「商用化迫る5G、何に使うの?」と題して、5Gがビジネス的に成功するための条件を洗い出している今回のテクノ大喜利。4番目の回答者は、エムジェイアイの前田悟氏である。ソニーにおいて、それまでテレビ受像機に縛られていた映像コンテンツの視聴を、多様な機器で可能にする商品の開発に携わった同氏が、5Gで想定しているアプリケーションの価値をユーザー目線から論じた。そして、5Gがビジネス的に成功するために満たすべき条件も挙げた。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
前田 悟(まえだ さとる)
エムジェイアイ 代表取締役
前田 悟(まえだ さとる)  ソニー入社後、1970年代からニューメディアや通信関連商品の企画、開発、商品化に従事。視聴場所を問わない世界初の無線液晶テレビ「エアボード」、外出先からでも自宅の テレビを視聴できる「ロケーションフリーテレビ」など先駆的な商品を次々と企画・商品化し、現在のインターネットにおける動画視聴の基礎を作り、パソコンや携帯電話などポータブル機器をテレビ化するコンセプトを築いた。2007年12月ソニーを退社、ケンウッドに移籍し、2008年の日本ビクターとの経営統合に参画。統合後のJVC・ケンウッド・ホールディングスにおいて技術担当執行役員常務としてR&D戦略、新規商品開発を行う。2012年エムジェイアイ株式会社設立、複数企業のコンサルタントを行う。特に現在、SigFox,、NB-IoTなどIoTビジネスの創造・発展に力を注ぐ。
【質問1】スマートフォンの進化に5Gは必要でしょうか?
【回答】普及に時間が掛かっている4Kや8Kの動画の視聴を無線でといった用途ならば不要。まして、画面の小さいスマートフォンではなおさらのこと。
【質問2】5Gのキラーアプリケーションは何だと思われますか?
【回答】 AIと各種ロボット、AR/MR、アプリケーションのクラウド化、IoT、ヘルスケア。
【質問3】5Gはビジネス的に成功すると思われますか?
【回答】成功するまでには長い時間を要する。