旺盛なメモリー需要の追い風を受けて、半導体のトップメーカーとなるという僥倖(ぎょうこう)を得た韓国Samsung Electronics社。NANDフラッシュメモリーやDRAM、そして液晶パネルなど、現時点で多くの電子機器に搭載されている基幹部品を作る技術で、同社が競合他社をリードしていることは揺るがない事実だ。

 しかし今、きたるべきAIやIoTを駆使する情報社会に向けて、電子システムを実現する基盤技術自体が大きく変わろうとしている。そして、その基幹技術の開発の主導権を握っているのは、莫大な資金力を持ったICT産業の巨人たちである。例えば、半導体チップのアーキテクチャーの将来像は、半導体メーカーよりも、むしろ半導体ユーザー側の企業が積極的に変えたいと考えている節がある。

 「なぜSamsungは、いつも強いのか?」と題して、同社の強みと将来の展望を議論している今回のテクノ大喜利。5番目の回答者は、東海東京調査センターの石野雅彦氏である。同氏は、強いとされるSamsung社が置かれている事業環境を、電子産業、ICT産業全体を俯瞰できるところまで引いて見直した。そして、同社の競合は、既存の半導体メーカーや液晶メーカーといった勝手をよく知る相手ばかりではないことを指摘した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
石野 雅彦(いしの まさひこ)
東海東京調査センター シニアアナリスト
石野 雅彦(いしの まさひこ)  山一証券経済研究所、日本興業銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、東海東京調査センターのシニアアナリストとして半導体、ディスプレイ、通信などテクノロジー企業および産業を対象にした調査・分析に従事している。
【質問1】Samsung社は、なぜ長期にわたって高い競争力を維持できるのでしょうか?
【回答】高い収益性を維持する経営意思決定の速さ、信賞必罰の人事戦略、合理的な研究開発の徹底。
【質問2】Samsung社の弱点があるとすれば、どこにあると思われますか?
【回答】 Apple社、Alphabet社、Microsoft社、Amazon社、Facebook社、Alibaba社、Tencent社など新インターネット革命者との技術革新競争。
【質問3】これからしばらく、Samsung社はトップであり続けると思われますか?
【回答】半導体メモリー分野ではトップを持続するが、スマホ、テレビなどコモディティ分野では中国企業との競争が激化する。