近年、整った動作環境での利用を想定して作られる高性能・高機能な半導体チップを、タフな環境で積極的に使っていこうとする潮流がある。自動運転車をはじめとするクルマの電子化はその端的な例であり、その他にも航空宇宙、医療、さらには建設や生産の現場で使う装置や機器に組み込むIoT関連機能も同様のくくりでとらえることができる。

 半導体チップをタフな環境で利用するためには、高性能化・高機能化を実現するためのものとは全く別体系の技術が必要になってくる。車載向けビジネスの参入を急ぐ半導体メーカーの中には、足りない技術を巨額のM&Aを実施することで得る選択をしたところもある。

 「ルビコン川を渡ったソニーの未来」をテーマに、車載向け事業に参入するソニーの未来について議論している今回のテクノ大喜利。4人目の回答者は、テカナリエの清水洋治氏である。実際のところ、車載向けと民生向けでは半導体チップの何が異なるのか。この点を語る上で、車載半導体のトップ企業の仕事を熟知する同氏は適任だ。民生機器向けとは異なる、車載向け半導体のビジネスをしていくうえでの心得を論じた。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
清水洋治(しみず ひろはる)
テカナリエ 代表取締役 技術コンサルタント
清水洋治(しみず ひろはる)  ルネサス エレクトロニクスなど半導体メーカーにて、1980年代から2015年まで約30年間にわたって半導体開発に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見を持っている。2015年から、半導体、基板、およびそれらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役 上席アナリスト。
【質問1】本格的に車載向けビジネスに踏み込むソニーの決断は正しいと思われますか?
【回答】正しい。引き返しができない道であるが覚悟はあるか。
【質問2】ソニーの車載向けビジネスに不安要因はありますか?
【回答】キット化を進めるための総合的なノウハウ。
【質問3】ソニーグループの他のビジネスに、車載向けビジネスが悪影響を及ぼす可能性があると思われますか?
【回答】バス構造をどうするかなどの課題は大きな試練に。