イメージセンサーのトップ企業であるソニーセミコンダクタソリューションズと独Bosch社が、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転向けの車載カメラの共同開発で技術提携することで合意した。暗い夜道でもクルマの周囲の状況を確実に検知できるカメラ技術を開発するという。さらにソニーは、同社のイメージセンサーと画像処理技術をデンソーに供給することが明らかになっており、車載向けビジネスに本腰を入れる様子がうかがわれる。

 ADASや自動運転において、クルマの目となるイメージセンサーは最重要部品の一つである。市場の成長は成長であり、そこにイメージセンサーのトップメーカーであるソニーが注力することは、極めて自然であるように見える。しかし、ソニーグループにとっては、車載向けビジネスへの参入は、かなり思い切った決断であると言える。

 ソニーの社内では、いつのころからか「人の命に関わる製品は扱わない」という不文律が語られてきた。同社は、テレビ、音楽、映画、ゲームなどエンタテインメントの分野を地盤にしてビジネスをしており、それらの分野で大きなインパクトを持った製品を同社が送り出すことを、世界中が期待している。人の命に関わる製品で万が一の事故を起こせば、他の自社ビジネスにも多大なる影響が及ぶというのが、その不文律が語られる理由となっている。近年の同社は、医療分野の事業も行うようになった。しかし、内視鏡など、あくまでも知見を持った専門家を支援する製品ばかりであり、今回参入する車載向けイメージセンサーの事業は一歩踏み込んだ感がある。

 時代の要請を鑑みて動く現在のソニーは、不退転の覚悟を持って車載向け事業に参入することと思われる。今回のテクノ大喜利は「ルビコン川を渡ったソニーの未来」をテーマに、車載向け事業に参入した先にある同社の未来について議論した。最初の回答者は、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。同氏は、成長が確実視される車載カメラ向けの市場への参入に理解を示しながらも、ソニーのような名のある企業がこの市場に参入する際の懸念事項を明確にした。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
三ツ谷 翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) プリンシパル
三ツ谷 翔太(みつや しょうた)  世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。
【質問1】本格的に車載向けビジネスに踏み込むソニーの決断は正しいと思われますか?
【回答】「向かうべき方向性」としては理解できる。
【質問2】ソニーの車載向けビジネスに不安要因はありますか?
【回答】センシング用途でソフト面の付加価値を取り込めるか。
【質問3】ソニーグループの他のビジネスに、車載向けビジネスが悪影響を及ぼす可能性があると思われますか?
【回答】グループとして培ってきた存在価値の希薄化。