日本の半導体産業が衰退した理由として、総合電機メーカーの部品部門であったことを挙げることが多い。
日本のコンピューターメーカーや家電メーカーが自社製品向け部品を内製するために半導体事業を始めた当初は、総合電機という事業形態の中で一定量の社内需要を確保しての半導体事業の立ち上げができた。ところが、部品の内製部門であった半導体部門で、本業を上回るような設備投資が求められるよう状況は一変。総合電機メーカーの経営者は、リスクの高いこのビジネスに及び腰になった。さらには、本業の競合企業にも製品を売らないと事業が成立しない半導体は、総合電機の枠組み内で行う事業としての意義も薄らいでいった。そして、日本の総合電機メーカーは次々と、半導体事業を分社化していった。
ところが、こうした日本の総合電機メーカーの動きを尻目に、韓国Samsung Electronics社は総合電機メーカーの枠組みを崩すことなく、半導体産業での強い地位を維持し続け、ついにトップの座を伺うまでになっている。いったい、同じ総合電機メーカーでありながら、日本企業とSamsung社では何が違ったのか。
「なぜSamsungは、いつも強いのか?」と題して半導体売り上げトップに躍り出る同社の強みを議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、慶應義塾大学の田口眞男氏である。同氏は、Samsung社がメモリービジネスに参入し、トップ企業に駆け上っていく過程を、競合企業の立場から見てきた。日本の総合電機のあり方とSamsung社の総合電機のあり方では、何が違っていたのかを分析し、さらには現在の同社の状況について考察した。
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員