韓国Samsung Electronics社は、2017年第2四半期の売り上げが約5兆9000億円、営業利益が約1兆4000億円に達したと発表した。これは、いずれも米Intel社を上回る数字である。同社の好調な業績は、NANDフラッシュメモリーやDRAMなどメモリー市場の活況による。そして、米国の調査会社であるIC Insights社などは、年間の売り上げでもIntel社を抜く可能性があると見ているようだ。1992年以来、Intel社は半導体売り上げ首位の座を25年間にわたって死守してきた。対するSamsung社は15年間連続の2位。実際にトップ交代が実現すれば、まさに歴史的な出来事であると言える。

 Intel社の陥落の理由も気になるが、驚くべきはSamsung社のビジネスの強靱さだ。日本の半導体産業の全盛期には、トップ集団のメーカーは数多くあったが、その順位は頻繁に入れ替わっていた。同社が15年間と長期にわたって、2位をキープし続けてきた背景に何があるのか、学ぶべきことは多いように思える。

 Samsung 社は、その強さの根源が分かりにくい企業だ。半導体メーカーは、総合電機ではなく専業である方が適しているという意見が聞かれる。しかし、Samsung社は、不利とされる総合電機の典型である。加えて、近年の同社は逆風の連続だった。ビジネスの柱であるスマートフォン事業では、「Galaxy Note7」での不具合によってブランドが失墜した。さらに、カリスマ経営者の李健煕会長が急性心筋梗塞で闘病生活に入り、それを引き継いだ李在鎔副会長も朴槿恵前大統領への賄賂疑惑で逮捕・起訴され、少なからず指揮系統の混乱があったと思われる。

 技術革新とビジネス環境の変化が激しい電子業界で強みを維持し続けることは簡単なことではない。今回のテクノ大喜利は「なぜSamsungは、いつも強いのか?」をテーマに、同社のビジネスの強さから学べること、さらには同社のウィークポイントについて議論する。最初の回答者は、野村證券の和田木哲哉氏である。同氏は、Samsung社が強くあり続けている要因を分析し、その上でとても安住していられる状況ではないことを指摘した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
和田木 哲哉(わだき てつや)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
和田木 哲哉(わだき てつや) 1991年早大教育卒。東京エレクトロンを経て、2000年に野村證券入社。アナリストとして精密機械・半導体製造装置セクター担当。2017年、Institutional Investor誌 アナリストランキング1位、日経ヴェリタス人気アナリストランキング 精密半導体製造装置セクター 1位。著書に「爆発する太陽電池産業」(東洋経済)、「徹底解析半導体製造装置産業」(工業調査会)など
【質問1】Samsung社は、なぜ長期にわたって高い競争力を維持できるのでしょうか?
【回答】偉大な人材・政策・経営が偉大な成功を産んだ。
【質問2】Samsung社の弱点があるとすれば、どこにあると思われますか?
【回答】弱点だらけであり、内部の危機意識は高い。
【質問3】これからしばらく、Samsung社はトップであり続けると思われますか?
【回答】いつトップから転落してもおかしくない。