社会の仕組みや技術は、課題を抱えている場所でこそ高度に進歩するはずだ。地震大国日本には、その必要性の切実さと、経験の豊富さから、世界をリードする事業継続計画(BCP)の仕組みと技術があると信じたい。

 2011年の東日本大震災から、今回の熊本地震の間に、BCPがどの程度進歩したのか。そのベンチマークとなるのが、ルネサス エレクトロニクスと、その製品を利用するユーザー、特に自動車業界の被害状況と復旧に至る経過である。微細加工研究所の湯之上 隆氏がルネサスとその上位発注者であるトヨタ自動車の取り組みを検証し、東日本大震災での学びは生かされたのか考察した。(記事構成は伊藤元昭)

湯之上 隆(ゆのがみ たかし)
微細加工研究所 所長
 日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北−零戦・半導体・テレビ−』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。

【質問1】熊本地震では、日本のものづくり企業は東日本大震災の教訓を的確に生かすことができたと思われますか。
【回答】震度7を経験したことのある企業は1社もなく、トヨタは同じ過ちを犯した

【質問2】半導体のユーザーに、今回の熊本地震はどのようなインパクトを与えたと思われますか。
【回答】日本に安全な工場など一つもないということを知らしめた

【質問3】日本の半導体メーカーが、国際競争力と事業継続性の双方を強化するため、どのような戦略・施策を採る必要があると思われますか。
【回答】代替生産を可能にすることにより、生産量の調整を自在にできるようにしたらどうか