4月14日、16日と立て続けに最大震度7を観測した「熊本地震」は、九州地方に生産拠点を置く、多くの企業に損害を与えた。九州地方は地震が少ないとみなされていたため、さまざまな業種の生産拠点が数多く置かれていた。2011年3月の東日本大震災以降、事業継続計画(BCP)の強化の一環で、生産拠点の分散化が進められてきた。しかし、こと九州地方に関しては、生産拠点の集中が進む傾向にあった。そんな中で発生した熊本地震は、日本には地震とは無縁な場所などないことを改めて感じさせた。
九州は、“シリコンアイランド”とも呼ばれる半導体の一大生産拠点である。半導体でのBCPの策定と実行は、たやすいことではない。数ある工業製品の中で、半導体は生産拠点の集中による効率化が極めて効果的な製品である。BCPの基本であるリスク分散と、事業競争力の強化するための生産拠点の集中は真逆の方向にあると言える。また、度重なる企業合併の末に出来上がった現在の日本の半導体メーカーは、生産拠点を統廃合したいと考えることはあっても、あえて分散させたいとは思わないだろう。
また、今回の熊本地震に関しては、スマートフォンなどに向けたイメージセンサー、ハイブリッド車に向けたパワー半導体など、巨大市場や成長市場の製品の生産に影響が出ている。いずれも世界市場の中で日本企業の製品の競争力が高い製品であり、世界のユーザーが日本の一地域に生産拠点が集中していることのリスクを改めて感じるきっかけになったことも懸念点だ。
今回のテクノ大喜利では、BCPと事業競争力の狭間で、日本の半導体メーカーが今後なすべきことについて論じていただいた。最初の回答者は、野村證券 和田木哲哉氏である。(記事構成は伊藤元昭)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター