「ルネサス エレクトロニクスって、どんな会社?」。このような問い掛けをすれば、電子産業の事情を多少知っている人ならば、「車載半導体で強いメーカーだよね。東日本大震災で工場が被災した時には、トヨタなど自動車業界が部品調達を復旧するために総出で手伝ったってニュースを聞いたことがある」といった答えが返ってくるかもしれない。

 本当に強いと言えるかは別として、ルネサスは売り上げの約半分を車載向けで稼いでいる。2017年4月の機構改革以前の事業本部の構成は、車載向けとそれ以外という分かりやすさだった。まさに、半導体メーカーと言うより、車載半導体メーカーと呼んだ方がよい状態である。

 同社に限らず、現在の日本の産業界は、世界市場での競争力を維持している貴重な国内産業である自動車産業に大きく依存している。苦境の中にいる企業ならば、業績の回復に向けて、国内に強い産業があることを生かした戦略を立てて当然だ。時には、顧客企業の無理を多少なりとも受け入れることも必要になってくるだろう。しかし、特定業界への過度の依存はリスクでもあり、成長を阻む要因にもなろう。

 「ルネサスの復活は本物か?」と題して、ルネサスの現在と未来を議論している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は、微細加工研究所の湯之上 隆氏である。ルネサスと日本の自動車産業の関係をつぶさに分析し、ルネサスが本当に復活するための筋道を探る。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
湯之上 隆
微細加工研究所 所長
湯之上 隆  日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北−零戦・半導体・テレビ−』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。
【質問1】ルネサスは、世界の競合の中で勝ち抜けられる状態になったのでしょうか?
【回答】そうは思わない。やっと危機を脱した状況であり、前途は多難。
【質問2】ルネサスが現在のように復調できた、最大の要因は何なのでしょうか?
【回答】復調したのではなく、工場を半分に減らし、社員を60%もリストラすることによって、危機を脱しただけだ。
【質問3】次のステージでのルネサスは、何を目指して何に注力すべきだと思われますか?
【回答】自動車業界の下僕(しもべ)からの脱却を目指すべきである。