人間の知能に迫る多様な認知能力と汎用性を持つ「強いAI」は、いまだ実現できてはいない。現在、活用が活発化しているディープラーニングや機械学習は、特定の作業に限定して学習しながら処理能力を高めていく「弱いAI」である。ものづくりの分野で応用されるAIもまた同様である。現時点のAIは、偉大な力を秘めてはいるが、万能ではない。

 ものづくり企業の業務は多様だ。その中には、AIでの処理に向いているものもあれば、向いていないものもあろう。従来のICT技術を活用した方が、AIよりもよほど効率よく仕事をさばくものもある。さらには、AI自体も、用途ごとに使い分ける必要が出てくるだろう。

 AI時代の製造業、特に日本の強みについて議論する今回のテクノ大喜利。6番目の回答者は、某ICT関連企業のいち半導体部品ユーザー氏である。同氏は、自身がICT技術を提供する側の立場にいることから、ものづくり企業が活用することになるAIの今の姿を冷静に見つめて、それを使う側にはどのような差異化要因が生まれ得るのか考察した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
いち半導体部品ユーザー
某ICT関連企業
 ICT関連企業で装置開発に必要な半導体部品技術を担当。装置開発側の立場だが部品メーカーと装置開発の中間の立場で両方の視点で半導体部品技術を見ている。
【質問1】AI時代の製造業では、研究開発や生産の競争要因はどのように変わるのか?
【回答】 AI時代では競争条件の変化が加速、変化自体も多岐にわたる。
【質問2】製造業でのAI活用の本格化で、新たな事業機会が生まれる業種・職種は?
【回答】個々のAIツール開発と全体を見ることができるコーディネーター。
【質問3】AI活用の本格化による、日本の製造業の国際競争力への影響は?
【回答】新たな擦り合わせで日本のものづくり企業の国際競争力は間違いなく強化される。