ICT企業は、ユーザー企業を対象にしたAI(人工知能)システムの活用セミナーを盛んに開催している。AIがトップ囲碁棋士に勝った、犯罪者が現れる場所を予測して警察官を急行させたなど、驚くべきAIの威力を伝えるメディアの報道も相まって、こうしたセミナーは満員御礼の状況だ。ただし、こうしたセミナーに参加する企業の中には、自社のどのような業務にAIシステムを活用すべきか明確にしていないところが驚くほど多い。「AIで自社の業務がどのように変えられるのか探ってこいと、役員に言われて参加しました」といった聴講理由を明かす参加者もいる。
生産技術の開発と運用、さらには研究開発などで、AIがものづくり企業の業務を大きく変える期待感は高まっている。AIが得意な仕事は、これまで熟練者が担ってきた暗黙知や擦り合わせが関わる作業であることも分かってきた。では、一体、自社のどの業務をAIに任せたらよいのか。現在、AIセミナーに参加する聴講者と同様に、ハッキリとした活用目的を定めていないところは多いのではないか。AI時代の製造業、特に日本の強みについて議論する今回のテクノ大喜利。5番目の回答者は、IHSテクノロジーの大山 聡氏である。同氏は、ものづくり企業がAIシステムの活用自体を目的化することなく、まず留意すべきことは何かについて考察した。
IHSテクノロジー 主席アナリスト