ものづくり企業において、研究開発の領域でもAI(人工知能)を応用しようとする動きが進んでいる。特許の明細書や技術文書を読み下して、自社のビジネスが有利に進む研究開発のテーマを抽出するために利用するところから導入が始まりそうだ。特許明細書や技術文書は、いずれも内容の専門性が高く、文書の表現も難解であることが多い。このため、研究者や技術者が多くの文書を読み下すことは困難であり、そのことが研究者たちを専門の殻に閉じ込める一因にもなっていた。AIは、確かに研究者や技術者の発想の翼を広げるための支援ツールとして有用かもしれない。

 研究開発は、極めて知的な作業である。製造業の企業にとっては、明日の糧を生み出す源泉でもある。ここに、AIがどのように関与し、何を変えていくのかは極めて興味深いテーマである。AI時代の製造業、特に日本の強みについて議論する今回のテクノ大喜利。4番目の回答者は、テカナリエの清水洋治氏である。同氏は、技術の研究開発やビジネスを創出する作業にAIを活用する際の視点について考察した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
清水洋治(しみず ひろはる)
テカナリエ 代表取締役 技術コンサルタント
 ルネサス エレクトロニクスなど半導体メーカーにて、1984年から2015年まで30年間にわたって半導体開発に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見を持っている。2015年から、半導体、基板、およびそれらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役 上席アナリスト。 
【質問1】AI時代の製造業では、研究開発や生産の競争要因はどのように変わるのか?
【回答】研究開発の方法は、改良・改善からダイナミックな組み合わせへ。
【質問2】製造業でのAI活用の本格化で、新たな事業機会が生まれる業種・職種は?
【回答】異業種の境界でAIが新しい価値を生み出す可能性がある。
【質問3】AI活用の本格化による、日本の製造業の国際競争力への影響は?
【回答】弱体化する。しかし機会はむしろ増える可能性大。