2016年、中国では、第13次5カ年計画(2016〜2020年)がスタートした。中国政府は、イノベーションの促進による経済生産性の向上を目指し、付加価値の高いハイテク産業の発展を目標として掲げている。
2015年5月には、製造業の高度化に向けた今後10年間の行動計画「中国製造2025」を発表し、日本やドイツに迫る製造業大国を目指すとした。この行動計画の中では、情報技術やロボット、バイオなど10分野を重点産業に指定し、その上で、さまざまな工業製品の頭脳となる半導体の自給率を2025年度までに70%に高めるとする。第13次5カ年計画では、中国製造2025の遂行に向けて支援案が示され、民間企業が半導体産業に投資する際、地方政府など政府と公企業が最大80%まで直接投資できるようになった。
ただし中国では、半導体産業の育成に欠かせない知財と人材の不足が、課題として残されている。第13次5カ年計画では、GDPの2.5%をR&D投資額に投じ、1000万人当たりの特許取得件数を2015年時点の6.3から2020年には12.0とほぼ倍増させるとしている。しかし、今から技術開発の成果が産業競争力の強化につながるのには、長い時間が必要だろう。
このため、欧米や日本、韓国、台湾などの企業から、M&Aやヘッドハントなどによって、知財や人材の収集を加速させている。「今後5年間で3000億元(約5.6兆円)を投じ、世界シェア3位の半導体メーカーを目指す」と豪語する紫光集団による“爆買い”と呼ばれる怒濤の巨額企業買収をはじめとするさまざまな動きが、中国の半導体業界の各所で起きている。
現在の半導体事業は、天文学的な資金力と神速の意思決定力が同時に求められる事業になっている。見方によっては、中国の国の仕組みと整合性がよい事業であるようにも見える。既存の半導体メーカーが、躊躇している間に、スルスルと思惑通りに事が進む可能性もある。
今回のテクノ大喜利では、中国の国策で動く半導体産業の育成の動きが、半導体ユーザーや装置・材料のサプライヤーを含めた世界の電子業界にどのような影響をもたらすのか、意見を聞いた。最初の回答者は、野村證券 和田木哲哉氏である。(記事構成は伊藤元昭)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター