2017年4月1日に分社化された東芝のNANDフラッシュメモリー事業専業の新会社「東芝メモリ」の売却先選びがいよいよ佳境に入ってきた。経営危機をしのぐための巨額資金を得たい東芝は株式の過半を売却する予定であり、同社の名称は「(仮)」を付けて呼んだ方がいい状態である。

 東芝メモリのNANDフラッシュ事業は、競合企業やユーザー企業などにとっては、売り出されることなどあり得ない、紛れもない優良事業である。スマートフォン向けストレージとしての需要は根強く、HDDへの代替が加速するサーバー向け、さらにはIoT関連機器向けでの需要増は確実である。しかも、同社と競合する企業は少なく、市場は寡占状態にある。

 NANDフラッシュ事業は、巨額の開発投資や設備投資を果敢に実施する必要がある事業である。ところが、ここ数年の東芝にはメモリー事業への潤沢な投資余力がなく、爪に火を灯すような事業運営を余儀なくされてきた。分社化し、外部資本を導入することで、東芝メモリのポテンシャルが一気に解き放たれる可能性もある。

 今回のテクノ大喜利では、とかく東芝本体の行方が話題になりがちな世相にあえて背を向けて、東芝メモリと同社のユーザーやサプライヤーにとっての理想的な売却シナリオを9人の識者が論じた。各回答者への質問は、以下の3つである。

【質問1】分社化と外部資本の導入によって、東芝メモリ(仮)の事業は何が、どのように変わりますか?
【質問2】東芝メモリ(仮)にとって、考え得るベストシナリオは?
【質問3】分社化と外部資本の導入によって、東芝メモリ(仮)との取引企業には、どのような影響が及びますか?

 3つの質問に対するそれぞれの識者による回答要旨は、以下の表の通りだ。今回は、9人の回答についてまとめてみよう。

表1 9人の識者による「どうなる、東芝メモリ(仮)」回答まとめ
表1 9人の識者による「どうなる、東芝メモリ(仮)」回答まとめ
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