3月29日に締め切られた東芝メモリの売却に向けた1次入札では、日本企業からの入札がなかったといわれている。世耕弘成経済産業大臣は、海外勢の買収について「国の安全などの観点から厳格な審査を実施する」と明言しており、経産省は2次入札への日本企業の参加を呼び掛けている。

 東芝メモリの競争力を維持するという観点から、今回のテクノ大喜利では微細加工研究所の湯之上隆氏や服部コンサルティング インターナショナルの服部毅氏が、海外企業による買収に期待する見解を出した。そもそも、技術流出や安全保障上の懸念があるような技術など、もはや東芝メモリには存在しないとの論も出てきた。海外企業は日本企業に比べて大きな資金を迅速に動かすのに長けており、これがメモリー事業の特性に合っている、というのが海外企業による買収を推す根拠である。

* 湯之上隆氏のオピニオンは「 東芝メモリの嫁ぎ先候補を総点検、最悪は日の丸連合」を、服部毅氏のオピニオンは「 東芝のメモリー技術、既に自らの手で海外に流出させている」を参照。

 では、日本企業や産業革新機構、日本政策投資銀行などが東芝メモリに出資することは、本当に意味がないのだろうか。「どうなる、東芝メモリ(仮)」と題して議論している今回のテクノ大喜利、9人目の回答者は東海東京調査センターの石野雅彦氏。東芝メモリを日本企業が買収することの重要性を、装置・材料メーカーも含めた広い意味での半導体産業での日本のポジションという観点から論じる。

(記事構成は、伊藤 元昭=エンライト
石野 雅彦(いしの・まさひこ)
東海東京調査センター シニアアナリスト
山一証券経済研究所、日本興業銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、東海東京調査センターのシニアアナリストとして半導体、ディスプレイ、通信などテクノロジー企業および産業を対象にした調査・分析に従事している。
【質問1】分社化と外部資本の導入によって、東芝メモリ(仮)の事業は何が、どのように変わりますか?
【回答】複合型業態の東芝から脱却して、有望な成長製品であるNANDフラッシュ専業としての位置付けが明確になる。
【質問2】東芝メモリ(仮)にとって、考え得るベストシナリオは?
【回答】どのような形態でも日本企業として存続させることが重要である。
【質問3】分社化と外部資本の導入によって、東芝メモリ(仮)との取引企業には、どのような影響が及びますか?
【回答】両刃の刃である。