売却する東芝にとっても、また売却される東芝メモリにとっても、分社化と外部からの資本導入は好ましい方向に向かうとする意見は多い。ただし、買収する相手次第で、その効果の度合いは大きく変わってくることだろう。場合によっては、本来好ましいはずの事業売却が、裏目に出る可能性さえある。

* 「どうなる、東芝メモリ(仮)」のこれまでのオピニオン、第1回は「やっとまともなメモリー事業ができる東芝、勝負はこれからだ」を参照。第2回は「東芝の大看板外し、真のメモリー専業体制で飛躍せよ」を参照。

 東芝メモリへの出資には、複数の企業が手を挙げた。台湾の鴻海精密工業やTSMC、中国の紫光集団、韓国のSK Hynics社、米国のWestern Digital(WD)社、Micron Technology社、Broadcom社、Apple社、Google社、Amazon.com社…。取り沙汰されている企業を見渡すと、それら企業の知名度の高さもさることながら、多様さに驚く。これは、東芝メモリが扱うNAND型フラッシュメモリーの価値の高さと応用の広がりを如実に表しているといえよう。

 声を掛ける企業が多様なことから、東芝メモリの売却先を適切に選定するためには、複眼的判断が求められることと思われる。「どうなる、東芝メモリ(仮)」と題した今回のテクノ大喜利 3番目の回答は、微細加工研究所の湯之上隆氏である。東芝メモリの買収に手を挙げたと噂される企業、グループを総覧し、横並びの比較項目で同氏が考える各社の優劣を論じる。

(記事構成は、伊藤 元昭=エンライト
湯之上 隆(ゆのがみ・たかし)
微細加工研究所 所長
湯之上 隆(ゆのがみ・たかし) 日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北−零戦・半導体・テレビ−』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。
【質問1】分社化と外部資本の導入によって、東芝メモリ(仮)の事業は何が、どのように変わりますか?
【回答】経営者が変わり経営戦略が変わる。買収する企業によって、ビジネスが成長するか、没落するかが決まる。最悪は、日の丸連合による買収。
【質問2】東芝メモリ(仮)にとって、考え得るベストシナリオは?
【回答】東芝メモリの技術者のポテンシャルを最大限引き出し、NANDビジネスを成長させてくれる経営者がいる企業による買収。第1候補はTSMC、第2候補はGoogle社とAmazon社。
【質問3】分社化と外部資本の導入によって、東芝メモリ(仮)との取引企業には、どのような影響が及びますか。
【回答】買収する側の企業の都合によって、NANDが調達できなくなるケースが出てくるだろう。