東芝のメモリー事業部門が2017年4月1日に分社化され、NAND型フラッシュメモリー事業専業の新会社「東芝メモリ」が発足した。ただし、同社の株式の過半が売却されることが既に決まっており、その名称も「(仮)」を付けて呼んだ方がいい状態である。経営危機の真っただ中にあり、先が見えない状況の親会社とは異なり、東芝メモリは世界中の名だたるIT(情報技術)企業、半導体企業、ファンドから引く手あまたの状況だ。3月29日に締め切られた同社への1次入札には、10社程度の入札があり、2兆円もの買収額を提示した入札者もいたという。
これほどの注目が集まり、数多くの企業が入札するのも当然である。東芝メモリのNANDフラッシュメモリー事業は、競合だった企業やユーザー企業などにとっては、売りに出されることなどあり得ないと考えていた優良事業だからだ。スマートフォン向けストレージとして根強い需要があると共に、HDDへの代替が加速しているサーバー向け、さらには今後の成長が期待されるIoT(モノのインターネット)関連機器向けで、需要増は確実。しかも、供給する側の競合は少ない、寡占状態にある。
そんな優良事業でありながら、これまで東芝のNANDフラッシュメモリー事業は、巨額の開発投資や設備投資を果敢に実施する必要がある事業特性に反して、まさに爪に火を灯すような事業を営んできた。東芝の中にいては逃れられないくびきから解き放たれた後には、一気にそのポテンシャルが解き放たれる可能性もある。
今回のテクノ大喜利では、とかく東芝本体の行方が話題になりがちな世相にあえて背を向けて、東芝メモリ(仮)の今後の行方、同社への理想的な出資企業像、分社化や外部資本の導入による半導体業界全体に与えるインパクトなどを論じていただいた。1番目の回答者は、東芝の半導体事業をよく知るゲスト回答者、いち半導体業界OB氏である。
東芝の半導体事業をよく知るゲスト回答者