米国は世界最大の消費市場である。トランプ大統領の言葉に乗って、米国での製品生産を強化することには、一定の合理性があるように見える。

 しかし、あらゆる工業製品の消費で米国が世界一であるわけではなく、また未来永劫世界一であり続けるわけでもない。工業製品の中に組み込まれる半導体などの消費の中心地は、いまや米国ではない。あらゆる工業製品の生産拠点は、中国をはじめとするアジア地域に集中し、サプライチェーンもまたアジア地域周辺で構築するのが効率的になった。しかも、消費市場として中国が急成長しているのだから、なおさら米国に工場を置く理由はない。消費市場も生産拠点もグローバル化している現在、日本企業が米国での生産比重を高めることは、リスクになる。

 トランプ政権下での電子業界に対する影響を考えている今回のテクノ大喜利。3人目の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。グローバルなビジネスを展開する半導体産業などの企業が、したたかに振る舞いながら、その裏できっちりと実利を押さえてトランプ政権と対峙している様子を伝える。また、回答者後記として、米国の政策に乗って現地生産に進出した鉄道車両メーカーの日本車輛が、現地事業で苦境に陥っている例を紹介している。海外諸国の政策といかに向き合ってビジネスを考えるべきか、示唆に富んだ話である。
(記事構成は、伊藤元昭=エンライト

服部毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
 大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・理事。マイナビニュースや日経テクノロジーオンラインなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」がある(共に共著)。

【質問1】トランプ政権によって、ネガティブな影響を受ける懸念がある業種をお聞かせください。
【回答】まず、専門技術を持つ外国人への依存度が高い半導体・IT・ハイテク企業。次に、海外に工場展開中、あるいは計画中の半導体・電子機器メーカー

【質問2】トランプ政権によって、ポジティブな影響が及ぶ可能性がある業種をお聞かせください。
【回答】米国内での工場建設やビジネス展開計画をトップが派手に表明する電子機器・部品企業、半導体企業

【質問3】日本の電子業界またはその関連業界の中で、大きな影響を受けるのは、どのような業種の企業だと思われますか。
【回答】まず、業種を問わず米国への輸出に大きく依存する企業。次に、米国政府の巨額公共投資の受注にありつけるインフラ企業