自動運転は、Google社が開発を進めている完全自動運転車の登場が引き金となって、にわかに現実味を帯びてきた経緯がある。このため、多くの自動車メーカーは技術開発を主導しているとは言えない状態だった。時代の急激な変化に対応することに長けた電子業界は、迅速にこの流れに乗り、自動車メーカーのニーズを先回りした技術を提案して、技術開発をリードしてきた。NVIDIA社は、こうした流れに乗る半導体メーカーの1社であり、自動運転向け人工知能の業界標準を握る可能性を秘めた企業である。

 時代の要請に応えるため技術開発の主導権を他の業界に許したとはいえ、自動車業界がそのままの状態を許すとは思えない。自動運転の分野は、半導体メーカーの顧客である自動車メーカーがどこに技術の独自性を求めていくのか次第で、その景色が一変する。

 NVIDIA社の行方を探る今回のテクノ大喜利、9人目の回答者は東海東京調査センターの石野雅彦氏である。NVIDIA社の行方を、これからの最大の顧客になる可能性がある自動車メーカーとの関係性に着目して論じる。
(記事構成は、伊藤元昭=エンライト

石野 雅彦(いしの まさひこ)
東海東京調査センター シニアアナリスト
 山一証券経済研究所、日本興業銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、東海東京調査センターのシニアアナリストとして半導体、ディスプレイ、通信などテクノロジー企業および産業を対象にした調査・分析に従事している。

【質問1】NVIDIA社の最大の競合はどこだと思われますか。
【回答】 Intel社とQualcomm社、Google社、そして自動車メーカー

【質問2】最大の競合の視点から、NVIDIA社のビジネスの弱点はどこにあると思われますか。
【回答】高いブランド力を誇り、群雄割拠する自動車産業に電機産業的な標準化モデルが通用するのか疑問が残る

【質問3】NVIDIA社に対抗するための戦略・施策としてどのようなものがあると思われますか。
【回答】自動運転分野で先行するNVIDIA社のロードマップに対抗できる戦略が必要

【質問1の回答】Intel社とQualcomm社、Google社、そして自動車メーカー


 Intel社、Qualcomm社と同社が買収する予定のNXP Semiconductors社、Google社、自動車メーカーなどが、NVIDIA社の競合として想定される。自動車メーカー、SNS関連企業、通信キャリアなど同社の顧客も、今後は最大のライバルになり得る。自動車メーカー、SNS、通信キャリアなどは自社で半導体設計を進めている。この点で、競合しているといえる。半導体のサプライヤーとユーザーの協創による半導体開発も始まっているようだ。