来たるべきIoT時代には、自動車や医療機器、電気・水道・ガスといったライフライン、交通インフラなど生きるために欠かせない機器やシステムが、インターネット経由で管理・制御されるようになる。豊かな生活や社会を生み出す仕組みであることは確かだが、システムの破壊、不正操作、情報漏洩を目論むハッカーの眼にも便利で魅力的なものに映っているはずだ。

 ICT業界では、ハッカーとの熾烈な戦いが日々繰り広げられている。そして戦線は、ICT機器以外のあらゆるモノへと拡大していく。2013年にはトヨタ自動車の「プリウス」とFord Motor社の「Escape」、2015年にはChrysler社の「Cherokee」、2013年には心臓ペースメーカーと、抜き差しならない機器でのハッキング実験の成功例が次々と報告されている。さらに2010年には、米国とイスラエルの機関が仕掛けたと言われているイランの核施設を対象にしたサイバー攻撃「Stuxnet事件」が発覚、インフラを扱う関係業界は既に抱えてしまったリスクの大きさに震撼した。

 ICT業界では、セキュリティー対策が巨大なビジネスになっている。そして今、全てのモノがセキュリティー対策の対象になった。半導体メーカーにとっては、セキュリティー技術をいかに自社の事業の中に組み込むかが、今後の事業の浮沈を決める要因になり得る可能性が高い。実際、NXP社やInfineon Technologies社など、ICカード向けセキュリティーチップで実績のあるメーカーは、この分野での強みを最大限に生かした事業戦略を描いている。

 今回のテクノ大喜利は「IoTセキュリティーの攻め所」と題して、IoT時代のセキュリティー対策を、半導体メーカーの商機とするための方策を検討していただいた。最初の回答者は、コンサルタントの立場から、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。(記事構成は伊藤元昭)

三ツ谷翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) プリンシパル
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 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。

【質問1】IoT時代のセキュリティーのどのような部分に危うさを感じますか?
【回答】 「制御系との融合」や「系の拡大」によってリスクが深刻化・拡散

【質問2】半導体産業には、どのような商機が生まれると思われますか?
【回答】エンドポイントでの対外的・対内的なセキュリティーの担保

【質問3】どのようなメーカーが、どのような戦略、施策を採るべきと思われますか?
【回答】セキュリティーはいち要素。プラットフォーム化こそが重要