人工知能(AI)が人間を超える日はいつか。AIに奪われる仕事は何か。こうした話題が、そこかしこで語られた2017年だった。AIの話では、その能力向上の凄まじさを中心に語られることが多い。AIが走行環境を判断して自律走行する自動運転車は、人間が運転するよりも事故を起こさないという。確かにその通りかもしれない。人間のように居眠りをすることも、飲酒運転することも、脇見運転することもない。
現時点で、事故を多く起こす人間の運転は許されている。しかし、現時点で人間よりも的確に走行環境を把握できる能力を持っているのではないかと思われるAIに、クルマの運転のすべてを委ねることはできていない。これは、本質的な問題が解決されていないからだ。人間は、一度事故を起こせば、その責任が問われる。安全を守る責任者が明確になっているため、危険なクルマも道路を走らせることができている。
いくら自動運転で安全性を高めても、事故をゼロにすることは恐らく不可能だ。では、自動運転車で事故が起きた時には、だれがその責任を負うことになるのか。AIに刑事罰を課すことはできない。すべての責任をメーカーに課していたら、ビジネスは成立しないことだろう。自動運転は、自律走行の性能だけではなく、そろそろこの辺りをケアした技術開発や制度設計が必要になってきている。これは、自動運転以外にも、AI応用すべてに言えることではないか。
「大喜利回答者、2018年の注目・期待・懸念」をテーマに、各回答者が注目している2018年の動きを挙げていただいている今回のテクノ大喜利。7番目の回答者は、慶應義塾大学の田口眞男氏である。同氏は、2018年の注目点として、AIが負うべき責任とは、メーカーの信用とはを、あらためて考える動きの展開を挙げている。
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員