台湾でTSMCによる半導体のファウンドリービジネスが始まった当初、日本の半導体業界の人々は、この新しいビジネスをおおよそ次のようにみなしていた。「半導体に価値をもたらすのは設計。付加価値が低く、金食い虫の製造だけを切り出して何の勝機があるのか」。鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry社、通称:Foxconn(フォックスコン))などのEMSについても、同様の評価だった。この文章を書いている筆者もこうした評価を下していた1人であり、今となっては自分の不明を恥じるばかりだ。
多くの企業が行っていた旧来ビジネスの機能の一部を切り出し、それを集めることで新しい価値を持つビジネスを生み出す。こうしたタイプのビジネスイノベーションの創出が相次いでいる。特に、商品を構成する要素やビジネスフローで扱う情報がデジタル化したことで、旧来ビジネスから特定機能を切り出しやすくなっている。
「大喜利回答者、2018年の注目・期待・懸念」をテーマに、各回答者が注目している2018年の動きを挙げていただいている今回のテクノ大喜利。6番目の回答者は、東京理科大学の関 孝則氏である。技術を生かしたイノベーション創出で豊富な実務経験と知見を持つ同氏は、2018年の注目点として、こうした機能切り出し型ビジネスの展開を挙げている。さらに、こうした手法で新しいビジネスを創出できる人材とは、どのような知見とスキルを持った人なのかを示唆した。
東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授