人工知能(AI)やIoTの技術の進歩をけん引するテクノロジードライバーがあるとすれば、それは間違いなく自動運転車だろう。自動車メーカー各社は、高度な技術を投入するモチベーションが極めて高く、巨額の研究開発費が投じて、自動運転に最適化したAIやIoTの技術の開発を急加速させている。自動運転車向けのAIやIoTが、それらの技術を他分野に応用するうえでの出発点となるのではないか。

 その一方で、先端技術の導入に際して、最も厳しい目で品質や信頼性が評価される応用も自動運転車であろう。自動運転車のユーザーは一般消費者であり、しかも自動車メーカーが開発したシステムが人の命を預かることになる。社会では今、客観的事実よりも人々の感情で物事が判断されてしまう風潮が出てきているという。こうした中では、安全であることを示すデータをいかに提示しても、一度重大な事故が起きてしまえば大変な批判にさらされることになる。一般消費者が納得するような品質や安全性の論拠を提示することは、極めて難しい。

 大喜利の回答者が2017年の注目点を挙げている今回のテクノ大喜利、8人目の回答者は慶應義塾大学の田口眞男氏である。同氏は、将来のAIの姿、これからの社会の世相を端的に映す場としての自動運転に注目、そこでの動きを見るうえでの独自の視点を提示した。
(記事構成は、伊藤元昭=エンライト)

田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 訪問教授

1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事、特に新型DRAMセルの開発でフィン型のキャパシタ、改良トレンチ型セルの開発など業界で先駆的な役割を果した。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。DDR DRAMのインターフェース標準仕様であるSSTLの推進者であり、命名者でもある。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2016年4月からは同大学 訪問教授と共に、技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。

【質問1】2017年に、最も注目しているトピックスは何ですか。
【回答】「Post-Truth(ポスト真実)」の行き着く先は、常識打破か社会の破壊か

【質問2】2017年に、最も注目している技術は何ですか。
【回答】自動運転

【質問3】2017年に、最も注目している企業はどこですか。
【回答】Qualcomm社