米Googleのオフィスでは、従業員は部屋の温度が「暑い」「寒い」と感じたらスマートフォンのアプリケーションを使って、ビル空調の温度を操作できるそうだ。しかも温度設定は頻繁に変更する必要がない。しばらくすると人工知能が従業員にとって最適な温度を割り出し、ビル空調を自動制御してくれるようになるからだ。

 Googleは外部のクラウドサービスを採用して、このようなビル空調を実現している。サービスの提供元は米サンフランシスコの対岸、米オークランドで2013年に起業したスタートアップの米Building Robotics。同社が提供するビル空調用のクラウドサービスは「Comfy」という。Building RoboticsにはGoogleの親会社である米Alphabetのベンチャー投資部門、米GVが出資している。

 ユーザー企業は、オフィスビルの空調を制御する「コントロールシステム」にComfyの端末(写真1)を接続する。そうすると、スマートフォンやタブレットのアプリケーションからビル空調が制御可能になる。

写真1●ビル空調のコントロールシステムに接続する端末
写真1●ビル空調のコントロールシステムに接続する端末
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 エンドユーザーは、アプリケーションの画面から「自分のスペースを暖かくせよ」「自分のスペースを涼しくせよ」というボタンをタップするだけ(写真2)。そうすればComfyのクラウドが個別の空調機を制御してくれる。

写真2●Comfyのアプリケーション画面
写真2●Comfyのアプリケーション画面
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 さらにComfyのクラウドは、エンドユーザーによる温度変更の履歴や、個別の空調機の設定を変えることで室内の温度が変化した履歴を「機械学習」する。機械学習とは、コンピュータがデータの中から知識やルールを自動的に獲得する技術のことで、現在の人工知能技術の基礎となっている。

 Comfyのクラウドでは、人工知能が従業員一人一人にとって最適な温度や、そのような温度を実現するために必要となる空調機の設定のパターンを割り出してくれる。その後はそのパターンに従って、ビル空調全体を調整するという仕組みだ。

 米国ではGoogleが買収したスタートアップの米Nestが、人工知能が家庭用エアコンをコントロールするという「Nest Thermostat」を販売している。Building RoboticsのComfyは、「Nestのオフィスビル版」といったところだ。