米Googleの最新スマートフォン「Pixel 2」は日本での発売が未定のため全く注目されていないが、SIMカード要らずの「eSIM」や画像認識AI(人工知能)である「Googleレンズ」など、スマホの未来を感じさせる1台だ。実機によるレビューでその凄さに迫った。

 シリコンバレー支局に勤務する記者が入手したのは、5型有機ELディスプレイを搭載するPixel 2(649ドル)だ。Pixel 2の特徴は大きく2つ。一つはスマートフォンとして初めて搭載された「eSIM」。もう一つはGoogleが開発した強力なAI機能だ。順を追って説明していこう。

Googleアカウントにログオンするだけで電話が利用可能に

 eSIMはスマホ本体に組み込まれたSIMカードに相当する機能で、携帯電話網との接続に必要な情報を書き換えることが可能だ。つまりeSIMを搭載するPixel 2は、SIMカードを差し込まなくてもスマホに携帯電話番号を設定し、携帯電話網に接続できる。eSIMは最新版の「Apple Watch」にも搭載されているが、スマホでeSIMを搭載するのはPixel 2と「同 2 XL」が初めてとなる。

 記者はこれまでGoogleの「Nexus 5X」で、同社が提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)サービス「Project Fi」を使用していた。そこで、同じ携帯電話番号をPixel 2にも引き継ぐことにした。Pixel 2の初期設定手順はシンプルだ。電源をオンにすると、SIMカードを使うか、それともProject Fiを使うかを聞いてくる。Project Fiを選ぶと、eSIMを利用することになる(写真1)。

写真1●Pixel 2のセットアップ画面
写真1●Pixel 2のセットアップ画面
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 続いてスマホをWiFi経由でインターネットに接続して「Googleアカウント」にログオンすると、Nexus 5Xで使用していたProject Fiの携帯電話番号がPixel 2で利用可能になった。豆粒のようなSIMカードをスマホに挿入する必要はもはやない。Pixel 2でProject Fiを有効にすると、それまで使っていたNexus 5Xでは携帯電話番号を利用できなくなった。携帯電話番号がNexus 5XのSIMカードから、Pixel 2のeSIMに移動したわけだ。

ソフト操作だけで電話番号が切り替わる

 さらにPixel 2に別のGoogleアカウントでログオンすると、eSIMの情報はそのGoogleアカウントにひも付くProject Fiの携帯電話番号に即座に切り替わった。ソフトウエアの操作だけですぐに携帯電話番号が切り替わるのは、新鮮な驚きだった。

 逆にNexus 5XでProject Fiの「再アクティベート操作」をすると、Pixel 2に移行した携帯電話番号がNexus 5Xで利用可能になった。携帯電話番号がGoogleアカウントにひも付いてスマホを行き来しているわけだ。

 現状ではPixel 2のeSIMの利便性は限定的だ。Pixel 2でeSIMを使うためにはProject Fiが必須だし、1つのGoogleアカウントでは1つのProject Fiの携帯電話番号しか保有できないからだ。しかしもし、Pixel 2のeSIMが複数の通信事業者に対応したり、1つのGoogleアカウントで複数のProject Fiの携帯電話番号が利用可能になったりすれば、ユーザーはその時の都合に応じて、携帯電話番号を自由に切り替えられるようになるだろう。eSIMはユーザーの利便性を大きく改善させる存在になりそうだと感じた。